半導体メーカーの米NVIDIAが、AIブームをけん引している。AIの学習・推論に有効な「GPU」(画像処理半導体)で、旺盛なAI需要を取り込んだ。時価総額ランキングで世界1位に躍り出るなど、名実ともに“AI時代の主役”になった。
しかし、なぜ「AIインフラといえばNVIDIA」なのか。当然ながら「GPUの処理性能が高い」という理由はあるだろうが、性能だけを比べたら競合メーカーも負けてはいない。NVIDIAがここまで支持される理由は何か。
ソフトバンクが1万基以上のGPUを集めて作った「AI計算基盤群」の構築メンバーに、この疑問をぶつけてみた。
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ソフトバンクは「生成AIが産業競争や社会インフラを左右する重要技術になる」(同社広報担当)という認識の下、AI計算基盤の開発に取り組んでいる。累計投資額は1220億円に上る(補助金控除後、2026年3月時点)。
同基盤の構築には、GPUやストレージ、管理ソフトウェアなどの各種インフラを統合したプラットフォーム「NVIDIA DGX SuperPOD」を利用。2025年に構築した「CHIE-4」は、スーパーコンピュータのAI処理性能を測る指標で国内1位に輝いた。
これまでに構築したAI計算基盤と、そこに搭載されているGPUは以下の通りだ。
| AI計算基盤 | GPUの数 | 導入したGPU | 稼働開始(リンク先はプレスリリース) |
|---|---|---|---|
| 第1世代 | 2000基以上 | NVIDIA Ampere GPU(A100) | 2023年10月 |
| 第2世代「CHIE-2」 | 4000基以上 | NVIDIA Hopper GPU(H100) | 2024年10月 |
| 第3世代「CHIE-3」 | - | NVIDIA Hopper GPU(H100) | 2024年 |
| 第4世代「CHIE-4」 | 4000基以上 | NVIDIA Blackwell GPU(B200) | 2025年7月 |
| 液冷式のAI計算基盤 | 1224基 | NVIDIA Blackwell GPU | 2025年12月 |
AI計算基盤の構築に第1世代から携わる同社の種邑宏平さん(AI&HPCインフラ統括部 統括部長)は、NVIDIAのAIシステムを採用した理由を次のように説明した。
「(AI計算基盤を使うユーザー側の要望もあるが)『構築時の最新GPUを使えるか』『GPUの性能を最大まで使えるか』『決められた期限内に安定稼働させられるか』といった点が重要でした。NVIDIA DGX SuperPODを選んだ理由は、ここにあります」
種邑さんによると第1世代を構築した2023年当時、米AMDなどのベンダーが提供するAIシステムは、大規模な計算基盤として検証されていなかったという。一方のNVIDIA製システムは、スパコン世界ランキング「TOP500」の上位に入る多くのコンピュータに搭載されているなど実績があった。
AIシステムとして完成されている点も、NVIDIAの強みだ。GPUの性能を引き出せるAIサーバ「DGXシリーズ」、大容量データを高速に伝送できるネットワーク機器、AIモデルの学習・推論に必要なソフトウェアをセットにした「NVIDIA AI Enterprise」などを一体的に導入することで、高性能なAIシステムを素早く構築できるとされる。
AI計算基盤の構築時、GPUを巡ってさまざまな苦労があったという。その一つが、GPUが頻繁に故障したことだ。AI処理は、GPUにかかる負荷が高いため故障しやすいという難点があるのだ。
「AI用のGPUは、従来のITインフラで使っていたサーバなどよりも故障が多い。AI計算基盤を作り、性能試験をして安定稼働させるまでにGPUがどんどん壊れました。こんなに壊れると知らないため、みんなビビりました」(種邑さん)
第2世代以降の構築プロジェクトに参画し、サーバ関連を担当したソフトバンクの横山哲雄さん(AIクラウド開発部 部長)もGPUの故障問題に頭を悩ませたという。
「GPUは希少で国内の在庫が少ないため、かき集めて、順次修理をしました。他のIT製品にはない独特な苦労でした」(横山さん)
ソフトバンクはGPUの故障問題に向き合いながら、AI計算基盤の性能をアップグレードしてきた。現在はAI計算基盤群をクラウドサービスとして他社に貸し出し、企業のAI開発を後押しする。
国内屈指のAIインフラを運用する同社は、日本の“AI変革”を加速させられるか。
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