従業員の皆さんが「あれ?」と思っている社内規定や人事制度。人事や総務など管理部門の皆さんが「こんなときどうすれば……」と迷っている制度設計や問い合わせ対応。そうした疑問を、社会保険労務士の佐藤敦規先生に聞いてみました。
佐藤敦規(さとう あつのり)
社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。
Q: 当社はクールビスを採用しています。ある社員から「ハーフパンツやビーチサンダルで出社してくる人がいて、不快な思いをしている。注意してほしい」と問い合わせがありました。当社のクールビズでは「業務に支障がなく、安全上問題がない範囲の軽装」を可としています。服装規定はここまでの酷暑を想定しておらず、回答に困っています。どう答えればいいのでしょうか?
A: 服装について、労働基準法に定めはありません。そのため、どこまでを認めるかは会社の判断になります。今回のようなケースも、会社として基準を決めた上で回答しましょう。
現在の服装規定での「業務に支障がなく、安全上問題がない範囲」という表現は、判断を各自に委ねている分、社員によって解釈が分かれます。この状態のまま特定の社員を注意するのは難しいでしょう。まずは、どこまでの軽装を認めるかを会社として決める必要があります。
例えば、通常の内勤日はハーフパンツを認めるのか、来客対応がある日はどうするのか、工場や倉庫など安全上の制約がある場所では何を禁止するのか。想定される場面ごとに線を引き、その理由も併せて示します。
「不快に感じる人がいる」という理由だけで禁止するのではなく、業務への影響や安全性、衛生面、顧客との関係など、会社として説明できる基準にすることが大切です。その基準があれば、軽装を希望する社員にも、問い合わせをした社員にも、同じ方針で回答できます。
酷暑が続けば「もっと楽な服装にしてほしい」という要望が出てくるのは自然なことです。ただし、その要望に必ず合わせなければならない、というわけではありません。そもそもクールビズを導入しない会社があっても、法律上問題はありません。
なお、この基準を社内のガイドラインとして運用するのか、就業規則に定めるのかで、必要な手続きは変わります。就業規則の一部として定めたり変更したりする場合、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働者代表の意見を聞き、意見書を添えて労働基準監督署に届け出ることになります。変更した内容を社員に周知することも必要です。
一方、社内のガイドラインとして周知するまでにとどめるのであれば、経営者の判断で決めていく形になるでしょう。オーナー企業であれば、トップダウンで決まることも多いはずです。その際、社員の意見を聞いて決めることで、運用しやすくなります。
服装規定は、手当とは性質が違います。一度設けた手当を廃止することは「不利益変更」に当たるため簡単に廃止できませんが、服装規定は、時代や環境の変化に合わせて柔軟に見直せます。酷暑を織り込んだ基準に更新し、場面ごとの理由まで示しておく。それが、双方の不満を減らす近道になるのではないでしょうか。
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