人気ゲーム『ポケットモンスター』に登場するモンスターボールを模した虫かごや、漫画『キン肉マン』に登場するマスクを完全再現した鋼製の「ロビンマスク」、著名人の手型の金属製オブジェ――。これらを手掛けているのは、精密鋳造メーカーのキャステム(広島県福山市)だ。
キャステムは、複雑な形状を可能にする「ロストワックス精密鋳造」などの技術を強みに、医療機器や半導体、電動工具、航空宇宙、ロボットといった幅広い産業向けに精密金属部品を製造している企業だ。2020年東京オリンピックで使われた聖火リレートーチの部品も製造した。
特定の業界や顧客に依存せず、多品種少量の部品製造を手掛けているのも特徴だ。取引先の約6割は、1社当たりの売上比率が1%未満の企業だ。
低コストを武器にする中国企業の台頭などを背景に、日本国内の精密鋳造メーカーは年々減少している。
BtoB向けに製品を製造していたキャステムでは、どれだけ精密な金属部品を作っていても、一般の人から見れば「何を作っている会社なのか」が分かりにくいという課題があった。採用活動でも、自社の技術や仕事の面白さを伝えにくかった。
また、部品メーカーでは、顧客から「この部品を作ってほしい」と依頼を受け、見積もりを出して受注するのが一般的だ。他社との相見積もりになることも多く、必ずしも自社が希望する価格で受注できるわけではない。
そこで、同社は知名度向上や収益基盤の多様化などを目的に、BtoC事業を始めた。
キャステムではもともと、展示会などで名刺交換をした人に、「ミニチュア工具」をプレゼントしていた。自社の金属加工技術をPRするために、ニッパーやハサミ、ラジオペンチなどの工具を、実物と同じように動かせる約25ミリのサイズで再現したものだ。
ミニチュア工具が11種類できたタイミングで、2013年に「ミニチュア工具セット」として販売。本格的にBtoC事業に参入する前からこうした商品もあったことから、戸田氏は「技術があるのだから、雑貨やおもちゃメーカーの面白い案件などで、一般の方でも分かるものが作れるといいなと考えました」と説明する。
2017年には、「Iron Factory」という自社商品ブランドを立ち上げ、BtoC商品の展開を本格的に始めた。
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