「ブルーシートが必要だから頼んでおいて」――。鉄骨、生コン、工具など、建設現場ではさまざまな物品が必要だ。現場によって必要なものが異なるため、拠点ごとに購買が分散し、全社の「購買状況を把握しにくい」「購買データの集約・分析が難しい」といった課題に直面しやすい。
そんな建設現場を変え始めているのが、通販サービス「Amazon.com」だ。正確には、“法人版Amazon”とも言える仕入れ・購買管理システム「Amazonビジネス」を導入し、“購買改革”に成功する企業が登場している。
全国に12支店を構える総合設備業のクラフティア(福岡市)と、全国に9支店を置く総合建設業の大本組(東京都港区)は、それぞれ100以上の営業所や作業所を抱えており「中身が見えない購買」に悩んでいた。
両社は、法人版Amazonを使い、購買の見える化と業務の標準化に取り組んでいる。導入後の成果や、システムを現場に浸透させるための工夫について、大本組 管理本部経理部の城山龍太郎氏と、クラフティア DX推進部の田口武氏が語った。
本記事の内容は、Amazonが7月28日に開催した「Business Exchange 2026」のセッション「『分散した購買をどう見える化するか』―現場分散型の建設2社が語る、ガバナンス強化と購買改革の実践」を基に構成したもの。
──そもそも、どのような課題を抱えていたのでしょうか。
田口氏(クラフティア): 当社では購買するものを大きく分けて4つに分類しています。ですが、主要材料以外の間接材については「いつ、誰が、何を買ったのか」が見えない状態でした。
例えば、経費精算では領収書を事務担当者が入力するため、実際の購入者が分からないことがあります。摘要欄(取引の詳細を簡潔に記録する項目)も「現場雑費」でくくられていたり「〇〇部長依頼分」といった記載になっていたりするケースが多く、中身を分析できませんでした。
何を買っているのかが分からないので、購買データを使った改善や、価格が適正かどうかの判断ができません。まずはこの「見えない購買」に手を入れたいと考えました。
城山氏(大本組): 当社も状況はほぼ同じでした。鉄骨や生コンなど、建物を建てるための主要材料は資材部で価格や発注先を管理できていました。ですが副資材や間接材、現場消耗品は資材部を通さずに、現場が電話やFAXで取引先へ発注していました。経費精算では「雑材料一式 1万円」「〇〇ホームセンター」といった情報しか残らず、分析に使えるデータではありませんでした。
また、現場担当者が買いに行く時間や、支店管理部が内容を確認して会計システムへ入力する手間など、多くの業務が発生していました。
──Amazonビジネスを導入後、どのような成果がありましたか。
城山氏: 経理業務の効率化です。これまでは各支店で月750枚ほどの領収書を会計システムに入力し、従業員への立替精算を行っていました。さらに、ECサイトの請求書も月50枚程度あったので、手作業で勘定科目ごとに集計し直す作業をしていました。
現在は、Amazonビジネスの請求データを会計システムへ一括で取り込み、工事コードごとに自動で振り分ける仕組みを構築しています。その結果、これまで支店で膨大な時間をかけて行っていた支払い処理や立替精算の業務がひと月10分に短縮できました。
田口氏: 当社では2023年からAmazonビジネスを導入したのですが、購買先をAmazonビジネスに一元化して、請求書払いにすることで立替経費精算を減らすことで、年間約4650時間を削減できました。これまで現場担当者がホームセンターへ買いに行っていた時間を削減できた結果、その時間を本来の業務へ充てられるようになっています。
また、定性的な変化もありました。以前は現場担当者が営業所や支店の事務担当者に「ブルーシートが必要だから頼んで」などと購入を依頼する業務がありました。現在は必要なものを現場担当者自身が注文し、請求書は事務担当者が処理するという役割分担が定着してきています。現場の担当者自身が「こう使えばもっと便利になる」と考えながら運用するようになった点も変化だと感じています。
──システムを現場へ浸透させるためにどんな工夫をしましたか。
城山氏: 最も重視したのは「利用者に手間をかけさせない」ことです。現場は非常に忙しいので、操作が複雑だと使われません。そこで、社内のイントラサイトからアクセスすれば「Amazon」を個人で利用する時と同じ感覚でAmazonビジネスにアクセスできるようにしました。
商品をカートに入れてレジに進み、簡易ワークフローを使って上長へ申請する。このワークフローが承認されれば商品が届きます。工事コードや勘定科目、支払い方法などは利用者が入力する必要がない仕組みにしています。
また、全国の支店を回り、対面やWeb会議で説明会も実施しました。導入の背景や使い方を直接説明したことは大きかったと思います。
さらに、現場を支援する支店管理部の協力も得ました。支店側の業務負担が増えない設計にしたことで、現場への展開にも積極的に協力してもらえました。
田口氏: システム導入にあたり、準備万端な状態で臨むのはもちろんですが、その上で現場の従業員に使ってもらうようにするにはどうするかを考えました。当社は12支店ありますが、本社からの情報は伝言ゲームのようになり、現場まで正しく伝わらないことがあります。そこで、縦と横の2つのルートで浸透を進めました。
縦方向はいわゆるトップダウンです。支店長会議で取り組みを説明し、各支店長から現場へ伝えてもらいました。実際、説明後に利用率が大きく伸びた支店もありました。
横方向では、本社・支店の総務部門や事務担当者を巻き込み、操作説明会を実施しました。現場に近いキーパーソンが周囲へ伝えることで、利用が広がっていきました。インフルエンサーを増やしていくようなイメージです。
──今後はどのような取り組みを進めていきますか。
田口氏: これまでは購買データが蓄積されていなかったため、分析自体ができませんでした。
現在は定期的にデータを分析しています。当社はAmazon以外の通販会社も利用しているのですが、他社との価格比較を行っています。商品単位で価格差が分かるようになったため「この商品はAmazonビジネスで購入した方が安い」といった情報を現場へ共有し、推奨商品として表示する運用も始めています。
データを確認し、改善し、現場へフィードバックするというサイクルを回しながら、購買コストの削減につなげていきたいと考えています。
城山氏: 現在はさらなる購買業務の省力化に向けて取り組みを進めています。
これまで電話や紙の請求書で管理していた副資材や消耗品について、紙の請求書をデータ化して分析し、現場や工程ごとによく使われる物品を整理しました。その結果、各工程でよく使用されている物品をまとめた購入カタログを作成できました。
副資材を一度に全て切り替えることは難しいですが、ブルーシートや安全用品、工具など汎用(はんよう)品からAmazonビジネスでの購入へ移行することで、発注業務のさらなる省力化を目指しています。
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