「総務が出社してくれているから、現場が円滑に回っている」と楽観視している経営陣は少なくない。しかし「総務=出社」という現状維持は、中長期的に見て、企業経営を脅かす深刻なリスクをはらんでいる。
現在、求職者が企業を選ぶ上で「リモートワークの可否」は極めて重要な指標となっている。他部門がリモートワークを実践する中で、総務だけが毎日出社を義務付けられていれば、社内の不公平感が高まり、既存社員のモチベーション低下や離職につながる。
さらに、柔軟な働き方ができない企業には、優秀なバックオフィス人材が集まらなくなり、結果として管理部門が弱体化するという悪循環に陥る可能性がある。
冒頭の「台風の時に困った」というエピソードは、まさに企業のBCPにおける致命的な弱点を表している。
大地震や大型台風、感染症の流行などの非常時に、総務パーソンが出社できない状況になったらどうなるのか。「重要書類の確認ができない」「郵便物の処理が止まる」「社内向けの緊急アナウンスや対応が遅れる」など、会社全体の機能が完全にストップしてしまうリスクがある。「総務が出社しなければ回らない会社」とは、非常時に弱い組織であると言わざるを得ない。
では、どうすれば「総務=出社」の現状から脱却できるのか。デジタルツールの活用と運用の見直しにより、総務のリモート化に成功している企業の事例を紹介しよう。
あるIT企業では、総務の「週5日出社」が当たり前になっていた。そこで、抜本的な業務改革を実施した。契約書はすべて「クラウドサイン」などの電子契約へ移行し、社内稟議もワークフローシステムに統一。課題だった郵便物に関しては、届いた郵便物を代行業者がスキャンしてPDF化し、クラウド上で確認や管理ができる「郵便物デジタル化サービス」を導入した。
オフィスの受付には無人対応のiPadシステムを設置し、来客時は訪問先の担当者へ直接通知が飛ぶ仕組みに変更した。これにより、総務が「誰かが来るかもしれないから受付にいなければならない」という拘束から解放された。
この企業の総務メンバーは現在、週1〜2日の出社と在宅を組み合わせたハイブリッドワークを実現。非常時でも自宅から全ての管理業務ができる体制を構築している。
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