パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。
株式会社全東信(以下、全東信)の経営破綻が、全国の中小飲食店に深刻な打撃を与えている。売掛金の回収不能という直接的な金銭的損失に加え、クレジットカード決済が当面できなくなったことで客足が遠のき、資金繰りが急速に悪化して廃業の危機に瀕する店が続出している。
この問題は単一の企業の倒産にとどまらず、地域経済の基盤を揺るがす重大な社会的事件となっている。本稿では、今回の事件が浮き彫りにした日本の決済インフラに対する監督体制の構造的欠陥を指摘し、クレジットカード会社および決済代行会社を金融庁の包括的な監督下に置くべき必然性を論じる。
1. 全東信の破綻がもたらした中小飲食店への致命的打撃
全東信の突如たる経営破綻は、多くの加盟店、特に経営基盤の脆弱な中小・零細飲食店に計り知れない苦境をもたらした。飲食店にとって、キャッシュレス決済、とりわけクレジットカードの利用は今や死活問題である。現金を持たない客を逃さないための生命線であり、売り上げの大きな割合を占めているケースが多いのだ。
しかし、全東信の破綻により店舗側に支払われるはずだった売掛金が宙に浮いてしまった(図は全東信のビジネスモデル)。回収不能となった売上金は中小飲食店のキャッシュフローを一気に圧迫し、仕入先への支払いや家賃・人件費の拠出を困難にさせている。
さらに追い討ちをかけているのが、「クレジットカードが当面使えない」という事態だ。決済端末の切り替えや他社への乗り換えには一定の期間と費用が必要であり、その空白期間中に客足が遠のく懸念が表面化している。
売り上げの急減と売掛金未回収のダブルパンチにより、今回の破綻をきっかけに経営が傾き、店を畳まざるを得ない中小事業者が少なからず生じるだろう。
これほどまでに社会的影響が甚大な業種であるにもかかわらず、なぜこのような事態を防げなかったのか。その背景には、ガバナンスと監督体制の大きな空白が存在する。
「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地
ドトールVS.コメダ なぜ好調? 店舗数だけでは分からない「強さ」の違い
スーパーから「値引きシール」が消える? 「2割引」「半額」の舞台裏で起きていること
「年収700万円」の人が住んでいるところ データを分析して分かってきたCopyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング