商品知識の共有には、説明会を収録した動画を使う。新商品の特徴や取り扱い方法に加え、どのような背景や思いで作ったのかも伝えている。
工芸品の説明には専門用語も出てくるため、字幕を正確に入れることに配慮。サービスに備わる組織内の共有辞書に用語を登録すると、自動字幕に反映できるようにした。
箔一の工芸品は1000円前後から400万円まで価格の幅がある。福島氏によると、特に高額な商品を販売するには、商品知識に加え、説明の経験が必要になるという。
接客ノウハウについては、経験豊富なスタッフを選び、店頭での話し方やディスプレーの仕方を動画にしている。別の店舗にいるベテランの接客も、新しく入ったスタッフが学べるようにした。
「ベテランの説明をまねして話せる若手のスタッフが増えてきたと感じています」(福島氏)
動画は、経営者の方針を届けるためにも使っている。箔一では毎月、方針発表の時間を設けているが、店舗で働くパート従業員や工場の職人が直接聞ける機会がなかったという。
創業者の時代には、働く人たちが工場に集まり、創業者の熱意に直接触れられた。福島氏は、それが技術の開発やものづくりのスピードアップにつながったと考えている。経営者には、パートやアルバイトも含め、働く人たちに思いを知ってほしいという考えがあった。
その伝え方を模索していた時期に、技術研修に動画を取り入れた。「創業者の思いや経営者の思いを伝えるのにも使える」と福島氏は考え、技術研修に加えて経営者の発信にも動画を使うようになった。
技術や商品、経営者の声を動画に残しても、必要な人が視聴できなければ伝わらない。見る側の事情に合わせて視聴の機会や共有方法も工夫している。
箔一ではシニア採用の販売スタッフも多く、スマートフォンで文字を読むのが大変だという声があった。現場では時間を取り、PCを使って皆で見るなどの工夫をしている。
紙のマニュアルを読む時間が取りにくかった売り場でも、動画なら15分の休憩に「みんなで見ようか」と視聴することがあるという。個人のスマートフォンで見る方法に加え、複数人で一緒に見る機会が現場に生まれている。
福島氏によると「ナレッジ動画」に利用登録していない一部の従業員も視聴できるよう、商品説明など広く共有してよい動画には、パスワード付きURLを発行している。社内SNSに商品動画の一覧とパスワードを載せ、スマートフォンのブラウザから視聴してもらう方法だ。将来は、全従業員がアプリを入れて見られる状態にすることを想定しているという。
共有する情報の範囲にも注意を払っている。技術に関する情報を全社員に公開することはできないため、閲覧権限を設定できることも、サービスを選ぶ際の条件だったという。商品説明のように広く共有できる情報と、共有先を限る必要がある情報を区別している。
伝統技術の継承とデジタルツールの活用という一見対極にある取り組みを組み合わせ、次の時代を担う人材を育てる箔一。動画を通じて技と思いを未来へ紡ぐ同社の挑戦は、組織の新たな強みとなりつつある。
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