職人がスマホで“サクッと”動画撮影→技を共有 「金箔ソフト」で知られる老舗企業が挑む「技術継承」(1/2 ページ)

» 2026年10月07日 07時00分 公開
[仲奈々,ITmedia]

 「金箔ソフト」などで知られる箔一(金沢市)は、事業や組織を拡大する中で、技術や知識の共有に課題を抱えていた。

 ベテランの技術や仕事のコツを、どうすれば他の社員に伝えられるのか。マニュアルに手順を書くだけでは、動きの細かな違いまで伝えるのは難しい。

 そこで同社が取り入れたのが動画の活用だ。職人の手の動きやベテランの接客に加え、経営者の思いを伝えるためにも活用している。

 実際にベテランの職人が“サクッと”動画を撮影し、技術について説明する環境が整っているという。

 PCが得意ではない技術者が動画を撮影し、情報発信をする──。箔一はどのように現場での動画活用を広げてきたのか。同社ブランディング部長の福島和恵氏が語った。

箔一 ブランディング部 部長の福島和恵氏(編集部撮影)

本記事は、L is B主催イベント「LUC2026」(9月17日)におけるセッション「技術・ノウハウ・価値観をつなぐ─箔一のナレッジ動画活用事例─」の内容を一部抜粋・編集したもの。


「金箔ソフト」で知られる箔一 従業員2倍、組織拡大で直面した課題

 1975年に創業した箔一では、金沢箔を使った工芸品から始まり、現在は箔材料、工芸品、化粧品、食用金箔、建築装飾、文化観光の6分野に事業を展開している。金箔をのせたソフトクリームで知られることもあるが、その仕事は製造から販売、建物の装飾まで幅広い。

金箔をのせたソフトクリームで観光客などから注目を集めた(出所:福島氏の講演資料、撮影:編集部)

 福島氏によると、従業員数はこの10年で2倍以上になった。店舗も増え、事業や組織が広がる中で、これまでの伝え方では共有しきれないことが出てきた。課題は大きく4つあった。

 1つは、職人の技術継承だ。ベテラン職人は「背中を見て覚えろ」という環境で技を身に付けてきた。細かい手の動きや道具の使い方、力加減といった感覚を紙のマニュアルで伝えるのは難しい。約100人の職人がいる中で、次の世代が学べる方法を考える必要があった。

 2つ目は、増え続ける商品知識の共有だ。工芸品だけで新商品は年間100品目以上、全体の取扱商品は1000品目以上に上る。特徴や取り扱い方法に加え、開発者のこだわりや製造に使う技術も、書面だけでは伝えきれなかったという。

 3つ目は、店舗を越えた接客ノウハウの共有。金沢市内を中心とする複数の店舗では、約80人の販売スタッフが働く。経験豊富なスタッフの話し方やディスプレーの工夫を、別の店舗のスタッフも学べるようにしたかった。

 4つ目は、経営者の思いを伝えること。組織の拡大に伴い、方針を書面で伝えることはできても、その背景や熱意まで従業員に届ける難しさが生じていた。

スマホで撮影しその場で共有 現場が自発的に撮り始めた仕掛け

 こうした課題に対し、箔一はビジネスチャットアプリなどを手がけるL is B(東京都千代田区)の企業向け動画共有サービス「ナレッジ動画」を導入した。

 技術者が多い箔一では、PCが得意ではないスタッフもいる。スマートフォンで動画を撮影し、その場で投稿できる同サービスの手軽さが導入の決め手の一つとなった。

 工場の現場でも、口頭での説明だけでは技術が伝わりにくくなったという課題意識があった。導入時にはL is Bの担当者が工場を訪れ、職人たちに使い方を直接説明した。

 新しいものを試すことが好きなスタッフも多く、その場で動画を投稿すると、本人たちが面白さを感じ、さまざまな作業を撮影するようになった。日常のちょっとした作業も試しに投稿してもらったことが、浸透につながったと福島氏は振り返る。

 技術継承のための動画では、職人の手元を撮り、本人が作業のコツを話す。映像で手の動きや道具の角度を示し、音声では注意する点を伝える。撮影した動画はそのまま投稿し、若手が感覚的な技術や力の入れ方を学ぶために使っている。

 「伝えるハードルが下がりました。現場の職人がスマホで簡単に共有できるので、工程ごとに細かく動画を撮ってアップしてくれています」(福島氏)

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