カキ不漁で進む“脱・カキ一本足打法” 陸上養殖に品種改良、今後は?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/3 ページ)

» 2026年10月16日 10時09分 公開
[長浜淳之介,ITmedia]
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店も生産も進化するカキビジネス

 こうしたカキ以外を提供する動きは、ゼネラル・オイスターに限ったことではない。

 9月10日に東京・八重洲にオープンした「ブル ネロ」は、カキとホルモンを看板に据えたイタリアンバルだ。同店を運営するワルツ(東京都新宿区)によると「大人が楽しめる酒場にふさわしい食材として、産直のカキとホルモンを選んだ」という。カキをイメージした岩のような壁面のカウンターや、ホルモンをモチーフにした装飾を施すなど、内装にもこだわった。

 看板メニューの一つが、島根県産の高級岩ノリである「十六島ノリ」の磯の香りと、カキの濃厚なうまみを組み合わせたペペロンチーノだ。

ブル ネロの料理は牡蠣とモツがテーマ食材(筆者撮影)

 渋谷を中心に「ヤキガキヤ」などのカキ専門店を展開してきたフォースター(東京都渋谷区)も、カキに特化しない業態を展開している。池袋エリアに初出店した「炭火ビストロ ル ロジボー」は、築約60年の古民家をリノベーションした、炭火料理とワインを楽しめるフレンチビストロだ。

 和牛やジビエ、季節の野菜などをオープンキッチンで豪快に調理する一方、カキへのこだわりを感じさせるメニューも提供している。

 また、カキそのものを環境変化に適応させようとする取り組みも進んでいる。

 オペレーションファクトリー(大阪市)は、10月2日にオープンしたオイスターバー「横浜 ワーフ」で、徳島県美波町の「うみの」とタイアップした。うみのは、日本で初めて「三倍体カキ」の種苗生産・販売に取り組んだ企業だ。

 三倍体カキとは、品種改良によって染色体を3組持たせ、ほとんど産卵しないようにしたカキである。通常のカキは夏場の産卵でエネルギーを消耗し、身痩せしやすい。しかし、三倍体カキは卵や精子をほとんど作らないため、夏場でも身入りや味を維持しやすいのが特徴だ。

 さらに、環境変化への耐性も期待されており、海水温上昇などによる大量死のリスクを抑える技術として注目されている。

カキ産業は、変化にどう立ち向かうか

 近年、気象の急激な変化により海の環境の不安定さが増しており、カキを取り巻く状況は厳しい。その中でも、前述のようなカキの品種改良や陸上養殖など、新たな技術も生まれている。

 こうした取り組みが進めば、海洋環境の変化に左右されにくく、安全で安定したカキの生産に近づく可能性がある。カキ産業は今、大きな危機をきっかけに、生産と販売の両面で変わろうとしている。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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