長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。
不漁により、カキを取り扱う専門店が苦しんでいる。全国一の養殖カキの生産量を誇る広島県では2025年、各産地で最大で9割のカキが死滅した。広島県を含む瀬戸内海沿岸では、国内の養殖カキの約8割が生産されているが、各地で同じような状況が起きている。
それに伴い、近年増えてきたオイスターバーなどのカキ専門店も、海鮮料理を幅広く提供する店へと転換する動きをみせている。
2000年の創業以来カキ専門店を全国に約30店舗を展開してきた、国内大手のオイスターバー・チェーンのゼネラル・オイスター(東京都渋谷区)もその一つだ。
同社以外にも、カキとホルモンを組み合わせた業態や、和食を中心としながらカキも提供する店などが出ており、さまざまな食材と組み合わせた店づくりが広がっている。
広島県は今年、例年並みのカキの水揚げ量を目指しているが、海洋環境の変化に対応するのは難しく、楽観視できる状況にはない。
カキ業界は高水温に強い品種の開発や水温を人工的に調節できる陸上養殖などに本腰を入れ始めているが、果たしてどうなるのか。カキ業界の取り組みを取材した。
「ここ2年間は、ノロウイルスの流行やカキの不漁で業界全体が苦境に陥る中、当社の業績も厳しかった。値引きをして客数や売り上げは確保できたが、原価は上がる一方。商売の先行きに不安を感じた」
ゼネラル・オイスターの代表取締役社長・渡邊一博氏は、カキ専業にこだわらなくなった理由をこう語る。
ノロウイルス対策をはじめ、安全性の確保には業界でもいち早く対応してきたと渡邊氏は自負する。しかし、状況を打開するには、カキ以外のメニューも充実させて客層を広げる必要があると判断した。
そこで2026年3月に開始したのが、海鮮とカキを楽しめるレストラン「マーレ&オイスター」だ。東京都品川区の大井町駅前にオープンした商業施設「大井町トラックス」に1号店を出店した。
大井町トラックス自体の好調ぶりを受け、客数は計画を30%上回っている。周辺には30〜40代の感度の高いファミリー層が多く、座って食事や酒を楽しみたい60〜70代のシニア層も取り込むなど、幅広い客層を集めている。
酒を注文する客も多く、ランチの客単価は約2200円、ディナーは約4600円と比較的高単価であり、休日には昼夜合わせて約8回転するなど、客入りは好調だ。
人気メニューは生ガキと焼ガキだ。さらに、その日に仕入れた鮮魚を使ったカルパッチョやアクアパッツァなども好評だという。
この好調ぶりを受け、7月には上野の既存店をマーレ&オイスターに改装した。前年に比べて客数が約20%増えており、滑り出しは上々だ。また、9月には、仙台市の既存店をマーレ&オイスターにリニューアルオープンしている。
今後は商圏ごとの特性を見極めながら、観光客や利用者が多いターミナル駅周辺など、多様な客層が集まるエリアの店舗をマーレ&オイスターに改装し、将来的には主力業態に育てていく考えだ。
ゼネラル・オイスターは「高輪ゲートウェイシティ」の「ニュウマン高輪 ミムレ」にも、2026年3月28日に高級業態の「レカイエ 8th シー オイスター」を出店している。こちらもカキのみならず、海鮮を取り入れたレストランだ。
「カキの不漁の背景には温暖化がある。昨年は台風が来ず、雨が少なかったことも影響した。環境変化に合わせて、売り方を変えていく必要がある」と、渡邊氏は強調する。
こうしたカキ不足は輸入で対応することもできそうだが、実際はそう単純ではない。
「米国産のカキを輸入すると仕入れ値は国産の2倍ほどになる。高級店なら成り立つが、大衆的な業態では利益を出しにくい」(渡邊氏)
渡邊氏によれば、ゼネラル・オイスターが扱う食材の中でも、カキは特に原価が高いという。カキに特化した店ほど、市況の影響も受けやすい。カキの価格変動は大きく、仕入れ値が前月の2倍以上になることも珍しくない。
そのため同社では、高度な冷凍技術を活用し、価格が安い時期に大量に仕入れて冷凍保存し、不漁や価格高騰に備えている。しかし、変動を完全に吸収するには限界があるという。
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