なぜ、元・大企業の部長が「自席で地蔵」になるのか? 中小企業が陥りがちな“シニア採用”の落とし穴(1/4 ページ)

» 2026年10月26日 07時00分 公開

 「大手メーカーで部長まで務めた方だから」

 期待を込めて、社内でも最高水準の年収を提示して迎え入れた。しかし、入社してしばらくたっても、目立った成果が出てこない。席に座って社内資料を読み込んでいるか、指示を待っていて何もしていない。気が付けば試用期間の半年がたち、双方が「合わなかった」と別れることになる。

 中小企業の経営者から、こうした話を聞くことは少なくない。そして一度このような経験をした企業の多くは「もう大企業出身のシニアは採らない」と心に決めてしまう。

 ミドルシニアの転職市場は拡大しており、2026年の転職者数は過去最多水準になるとの予測もある。受け入れる企業にとっても、決して他人事ではない。しかし、その失敗は本当に本人だけの問題なのだろうか。

 今回は3000人以上のシニアのセカンドキャリアを支援し、自社でもシニアを採用してきた立場から、受け入れる企業側が見落としがちな点と、失敗を減らすための工夫を解説する。

期待して採用した大企業出身のシニアが活躍してくれない……。なぜ、このような事態が起こるのか(出典:ゲッティイメージズ、以下同)

なぜ、行動が止まるのか? 大企業出身シニアに多い「2つのパターン」

 シニアと一口に言っても、大企業出身か中小企業出身かで、受け入れた後の様子は大きく異なる。

 中小企業から中小企業への転職では、大きなギャップは生まれにくい。入社してシニアは最初に社長と話し「何に困っていますか」と聞く。「営業が足りない」と言われれば、サービス資料を受け取って、すぐに売りに出ていく。何をすれば最初に信頼を得られるのかを、肌感覚で分かっている人が多い。

 一方、大企業出身者でよく見られるのは、以下の2つのパターンだ。

 1つは「指示待ち型」である。与えられた仕事を丁寧に進めることを30年続けてきたため、指示がなければ動き出しにくい。もう1つは「情報収集型」だ。決算書や組織図、自社の強みと弱み、誰がどんな役割を担っているのかなど、全体像を把握しようとする。それ自体は悪いことではないが、全てを理解するまで前に進めない。

 どちらの場合でも、結果として手が動かない状態が続く。中小企業は忙しく、細かな指示を出す余裕もないため、周囲からは「あの人は何をしているのか」と言われてしまうのである。

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