「大手メーカーで部長まで務めた方だから」
期待を込めて、社内でも最高水準の年収を提示して迎え入れた。しかし、入社してしばらくたっても、目立った成果が出てこない。席に座って社内資料を読み込んでいるか、指示を待っていて何もしていない。気が付けば試用期間の半年がたち、双方が「合わなかった」と別れることになる。
中小企業の経営者から、こうした話を聞くことは少なくない。そして一度このような経験をした企業の多くは「もう大企業出身のシニアは採らない」と心に決めてしまう。
ミドルシニアの転職市場は拡大しており、2026年の転職者数は過去最多水準になるとの予測もある。受け入れる企業にとっても、決して他人事ではない。しかし、その失敗は本当に本人だけの問題なのだろうか。
今回は3000人以上のシニアのセカンドキャリアを支援し、自社でもシニアを採用してきた立場から、受け入れる企業側が見落としがちな点と、失敗を減らすための工夫を解説する。
シニアと一口に言っても、大企業出身か中小企業出身かで、受け入れた後の様子は大きく異なる。
中小企業から中小企業への転職では、大きなギャップは生まれにくい。入社してシニアは最初に社長と話し「何に困っていますか」と聞く。「営業が足りない」と言われれば、サービス資料を受け取って、すぐに売りに出ていく。何をすれば最初に信頼を得られるのかを、肌感覚で分かっている人が多い。
一方、大企業出身者でよく見られるのは、以下の2つのパターンだ。
1つは「指示待ち型」である。与えられた仕事を丁寧に進めることを30年続けてきたため、指示がなければ動き出しにくい。もう1つは「情報収集型」だ。決算書や組織図、自社の強みと弱み、誰がどんな役割を担っているのかなど、全体像を把握しようとする。それ自体は悪いことではないが、全てを理解するまで前に進めない。
どちらの場合でも、結果として手が動かない状態が続く。中小企業は忙しく、細かな指示を出す余裕もないため、周囲からは「あの人は何をしているのか」と言われてしまうのである。
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