これからの人工知能との付き合い方(前編):人工知能に人間の職業は奪われるのか(2/4 ページ)
人工知能を巡る議論の前提となる考え方、そして人工知能は人間の感情や本能を再現できないという内容で、東大准教授・松尾豊先生に話を聞きました。
人間だけにできること
ここからは人間の得意なことと、人工知能の得意なことをもう少し掘り下げてみます。まず、人工知能にはできない、人間が得意とすることとは何でしょうか。それは、人とのコミュニケーションではないかと思われます。
松尾先生: コックの仕事は確かに能力的には代替可能になっていくのかもしれない。ですが、私はコックがいなくなるかと言われればそうはならないだろうと思います。
カフェに行ってわざわざ店員が入れてくれるコーヒーでなくても、コーヒーを飲みたいだけならコンビニや自販機で安く買えますよね。わざわざカフェに行くというのは、やはり人間がもたらす付加価値が大きいからではないかと思うんです。
料理全般に関して言えば、以前に比べて商品の加工度が上がっていることに注目してみましょう。スーパーで、青椒肉絲(チンジャオロース―)のタレみたいに、食品をいためて最後にかけたら料理が完成するという商品はすごく増えていると思います。完成したものを売ればいいのに、なぜか「何か工程を残す」商品が出回っている。
そうした商品や体制が世の中に溢れているのは、人が作った感を味わってもらうためだし、そして人はやっぱり人が作ったものを食べたい。人間の社会的な動物としての感覚として、それを求めると思います。
――カフェに行って店員さんとやりとりをしながらコーヒーを飲むといった行為も、ある種の達成感を得ている行為ですよね
松尾先生: 徹底的な低コスト化を目指すところではロボットによる自動化はもっと進展すると思います。ファストフードとか牛丼が代表格ですかね。
ただ、いいお店ではやっぱり人と関わる部分がずっと残っていると思います。コックの役割が調理そのものではなく、客の要望を聞いてロボットに指示を出して料理を作らせて客に料理を出す、そういうものになる可能性もあると思っています。
――より、人間のインタフェースとしての機能が強調されていくということでしょうか?
松尾先生: そして、この傾向はいろいろな業種であり得ることだとも思っています。
弁護士もそう、医者もそう。人と会話して、弁護方針や治療法を決めていくだとか。そしてこの工程には多くの知識が必要とされます。コックも。お客さんの好みを聞いてどういう料理を出せばいいのかっていう部分を決定するために、相当な料理の知識が必要になるわけじゃないですか。だけど実際に作るのは自分じゃなくてもいい。
関連記事
- 10年後になくなる可能性が高い職業とは(前編)
今回は、オックスフォード大学発表の論文に用いられている機械学習手法をもとに、日本で「なくなる可能性が高い職業」を具体的に考えてみます。 - 10年後になくなる可能性が高い職業とは(後編)
10年後になくなる可能性が高い職業とは? 今回は、601の職業を6つのクラスタに分類・分析し、今後、人工知能に代行されないために人間に求められる能力はどういうものかを考えます。 - 人工知能は、人間と同じ「思考」ではない
最近では、人工知能が入った家電が珍しくありません。掃除をしてくれたり健康的なメニューを推薦してくれたり――いかにも人間のような動作をしますが、少し怖いと思うことも。なぜなら、人工知能の中には人間は入っていないからです。 - 医療やビジネスを一変させるスパコン、「ワトソン」が人類の救世主になる日
米IBMが開発に注力しているスーパーコンピューター「ワトソン」が注目を集めている。人の会話や文書といった膨大なデータを分析し、最適な答えを瞬時に導き出す――今後、ワトソンの活躍が期待されるのは医療分野だ。ワトソンがもたらす未来の医療とは? - ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」――今、人工知能で人の感情はどこまで分かるのか?
ソフトバンクがパーソナルロボット「Pepper」を発表した。感情認識機能が目玉のようだが、実際にロボットは人間の感情を認識できるのだろうか。 - “空気の読める人工知能”が稼働、「未来の会議室」はこう変わる
ぐだぐだなブレスト会議にNO!──日本ユニシスと大日本印刷が「空気が読めるコンピュータをつくろう」プロジェクトをベースにした「未来の会議室」の開発に乗り出した。どんな仕組みか、今後どうなるか。概要とイメージを解説する。
関連リンク
Copyright © Credo All rights reserved.