オムニチャネルに躍起になるスーパー各社、成功のポイントは?:小売・流通専門家に聞く(2/2 ページ)
今スーパーマーケット業界で旬なキーワードが、すべての販売チャネルを統合する「オムニチャネル」であろう。大手を中心に各社がその推進を急いでいる。日本におけるオムニチャネルの現状や成功のポイントを小売・流通業界に詳しいアクセンチュアの山口邦成シニア・マネジャーが解説した。
ネット利用者にインセンティブをどう与えるか
多くのスーパーがオムニチャネルへの取り組みとしてまず行ったのが、スマートフォンアプリなどを利用したクーポン配信サービスです。O2O(オンライン・ツー・オフライン)の先駆けといえる取り組みですが、従来もスーパーではダイレクトメール(DM)や新聞の折り込みチラシを消費者に配布していたので、単にそれがデジタル化しただけと言えなくもありません。これだけでは消費者の購買を促進するには物足りないと言えるでしょう。
では、どのようにオムニチャネルを推し進めればいいでしょうか。ポイントはいかに消費者にチャネルの使い分けをしてもらうかです。現在、実店舗とネット店舗の売り上げ比率は、実店舗が9割以上という状況です。そこでわざわざネットを使ってもらうためには、インセンティブをどう与えるかが重要になってくるでしょう。
例えば、雨で天気の悪い日にはトイレットペーパーなど雨の中で持ち運びが不便な日用品の割引キャンペーンをネット店舗で打って購買を促すなど、消費者がネットで買う必然性を明確にして、実店舗と区別してもらうような提案がスーパーマーケット側に求められてきます。
本腰入れてオムニチャネルに取り組むためには、少なくない投資が必要となります。基幹システムの刷新に加えて、配送ネットワークの構築、商品ピッキングなどのオペレーションをどうするかということも考えなくてはなりません。
これまでのネットスーパーは実店舗の売り場にある商品をスタッフがピックアップして、バックヤードに運び、トラックなどで近隣の顧客に配送するスタイルが一般的でしたが、より規模を拡大するにはディストリビューションセンター(DC)を設けるのも一つの手です。ただし、それに伴う先行投資などコストとのトレードオフであることは言うまでもありません。
そうするとDCの立ち上げは資金に余力のある大手企業が有利で、地方のスーパー1社だけでDCを所有するというのは厳しいかもしれません。しかし、例えば、同じ地域のスーパー数社がDCを共同利用するという選択肢は十分にあり得るでしょう。
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