連載
排ガス不正問題が分かるディーゼルの仕組み:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)
ディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していたフォルクスワーゲンの問題で自動車業界は持ちきりだ。ここで一度ディーゼルの仕組みと排ガス規制について整理し、問題の本質を考え直したい。
EUの野望に負けた日本
こうして元来ディーゼル志向の強かったEUでさらにディーゼルの普及が進んだのだ。欧州での普及を根拠にディーゼルを礼賛する人もいるが、別にディーゼルだけが特別に優秀なシステムだったから発展したわけではなく、社会システムがディーゼル有利になった結果である。ただし、忘れてはならないのは、地球温暖化に対する対策としては重要なテクノロジーの1つであるということだ。あくまでも是々非々の話である。「ディーゼルなんて要らない」というのは暴論だ。
ちなみに日本では、製造業における環境対策が既に一定のレベルに達していたため、1990年の各国CO2排出量を基準として削減量を計測するこのレースには参加のしようもなかった。そんなことはとっくにやり終わって削減余地が小さかったのである。
しかし、EUと綱引きの末、「他国に先んじて改善が進んでいることを加味して欲しい」という意見を半ば黙殺されて、日本に不利な削減基準を日本政府自身が提案させられるという結果になった。ちなみに、米国は完全に無視して京都議定書を批准しないという強硬ぶりだった。見事なGoing my Wayである。ただし日本の場合、製造業はともかく、自動車のディーゼル化を進めればCO2には軽減の余地があったはずだ。しかしそれは実行されなかった。その理由は日本の排ガス規制にあったのだ。
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