コネクテッドカーの明るい未来(6/6 ページ)
昨今、コネクテッドカー、自動運転車が騒がれている。これらの技術によって自動車メーカー、サプライヤーのビジネスモデルは大きく変わる可能性が高い。単に技術があるから開発するのではなく、顧客に対して持続的に価値を提供して、自社を選択してもらうためには何をどこまで提供するのか。そのためには、どのようなケイパビリティ、ビジネスモデルが必要なのだろうか。
ユーザーフレンドリーなハードウェアおよびインタフェース
将来のコネクテッドカーは非常に複雑になるので、安全で直感的でユーザーフレンドリーなインタフェースの提供も重要となる。これらは、今後増加する高齢ドライバーに対して、特に重要である。自動車メーカーは、この分野で既に強力なケイパビリティを有している家電メーカーとも競争しなければならなくなる。
また、コネクテッドカーの電子機器はますます複雑になるため、オープンインタフェースの開発と業界基準が必要になる。既に周波数などの通信規格は確立されているが、通信内容をどう解釈するかが決められていないので、車はまだ互いに通信できていない。そうした基準が明確にされ、広く適用されない限り、コネクテッドカー製品の市場化は制約を受ける可能性がある。
より速い製品サイクル
自動車業界の標準的な製品サイクル(開発開始から製品の終売まで)は約8年だが、家電業界は1年未満である。自動車メーカーがコネクテッドカー向けエレクトロニクス機器で成功するためには、家電メーカーの急速な開発サイクルに合わせなければならない。また、更新および製品開発を迅速かつ手間なく統合できるような、完全に機能するモジュラーシステムを構築することが必要になる。そうしたモジュラーインフォテイメントの構築によって、個々のコンポーネントも自動更新できるようになるだろう。
有能な人材の発掘
コネクテッドカーの登場によってビジネスモデルの大きな変革が必要になると考えると、自動車メーカーは、必要なノウハウを持つ有能な従業員を幅広く集めなければならない。単に技術的なスキルだけではなく、顧客とデジタル的につながる方法とそのつながりをマネタイズする方法を理解している人材が必要になる。電気通信の専門知識は特に重要となり、既に自動車メーカーは、優秀な人材を集め始めている。
結論
コネクテッドカー市場は、今後5〜7年の間に、自動車メーカーの売り上げを大幅に拡大し、顧客とより緊密な、より収益性の高い関係を築く可能性を秘めている。一方で成功するためには、技術だけあればよいのではなく、アプリケーションおよび製品パッケージの適切な組み合わせを適切な顧客にセット販売することを学ばなければならない。また、技術的な優位性を維持していきたいのであれば、対象となる研究開発への体系的な投資が必要となる。この機会をとらえられない自動車メーカーは、想定外のスピードで、自動車業界内外の競合他社に市場シェアを奪われることになるだろう。
“In the fast lane - the bright future of connected cars”, by Richard Viereckl, Jorg Assmann and Christian Raduge, originally published by Booz & Company, February 3, 2014
著者/監訳プロフィール
リチャード・ヴァィレックル
Strategy& フランクフルトオフィスのシニアパートナー。世界中の大手自動車メーカーに対し、30年以上のコンサルティング経験を有し、製造組織、販売組織および研究開発組織の変革を専門としている。
ヨルグ・アスマン
Strategy& フランクフルトオフィスのパートナー。オペレーションチームのメンバーとして自動車業界を専門に企業が成長するための再編成、コスト削減および販売促進といった構造改革を手助けしている。
クリスチャン・ラディゲ
旧ブーズ・アンド・カンパニー ミュンヘンオフィスの元アソシエイト。工学製品および工学サービス、並びにオペレーション・プラクティスのメンバー。工程および製品開発を専門としており、自動車業界、特にコネクテッドカーに重点を置いている。
青井堅(あおい・けん)
Strategy& 東京オフィスのマネージャー。消費財・小売業、製造業を含む幅広いクライアントとともに、全社戦略、商品戦略、新規事業戦略、組織構造改革などのプロジェクトを行ってきた。
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