「なぜ今、宇宙に“張る”のか」 日本の著名投資家が語る:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
米国の後を追うように、日本でも宇宙ビジネスに対する投資が盛り上がりつつある。ベンチャーキャピタリストや著名投資家はなぜ今積極的に投資するのだろうか。
10年前でもなく、10年後でもなく、今が投資のタイミング
TomyK代表の鎌田氏はロボット、人工知能、宇宙、ゲノムなど、技術ベンチャーの立ち上げをエンジェル投資と経営支援の両面から支えている。宇宙分野では超小型衛星のアクセルスペースに投資を行っている。
投資領域を「直近は、地球観測と衛星インターネット。特に衛星インターネットは新興国におけるネット需要や人が行かない地域のIoT(Internet of Things)需要がある。次に宇宙旅行などがあり、最も遠いのが火星移住や資源探査とみている」と鎌田氏は見立てる。
また同氏は、「技術ベンチャーが成功するには、技術が進化する歴史上のあるタイミングがある。PCでMicrosoftやIntelが出てきたタイミングも、ネットでGoogleが出てきたタイミングも、10年前でもなく10年後でもなく、あのタイミングだった。宇宙も10年前であれば部品もそろっていなく、打ち上げも民間ではできなかった。今はベンチャーでもできるタイミングになった」と語る。一方で、他分野との違いを「宇宙はメカやソフトや通信などいろいろな技術の集合体であり、参入できる企業は限られる」と打ち明ける。
志をあきらめない力と、現実に応じた軌道修正のバランスが大切
グリーの共同創業者として著名な山岸氏は、現在投資家として多数のベンチャーを支援しており、「投資領域を見定める際にはいわゆる半導体のムーアの法則やコンピュータのチープレボリューションのインパクトがある分野を重視している」と説明する。宇宙分野ではアストロスケールに出資しており、「宇宙ビジネスも電子部品の値段が下がったり、高度なシミュレーションが容易にできるようになったり、低価格でいろいろなことができるようになってきた。今投資をしないと5〜10年後の果実は獲れない」と力を込める。
自ら起業家・経営者としての経験がある同氏は、宇宙ベンチャーの経営に関して「宇宙ビジネス大枠としてはチャンスだが、利益が出るまで時間がかかる。従ってP/LやB/Sをマネージしつつ成長できるかというビジネスセンスは非常に重要。アストロスケールの岡田さんにお会いして、パッションやアントレプレナーシップだけでなくて、ビジネスマンとしてのセンスを感じた」と振り返る。
「長期の志をあきらめない部分と、現実に応じて軌道修正をしていくバランスが重要。大切なのはマイルストーンを定めてPDCAを回していくこと」とも語る。
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