「なぜ今、宇宙に“張る”のか」 日本の著名投資家が語る:宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)
米国の後を追うように、日本でも宇宙ビジネスに対する投資が盛り上がりつつある。ベンチャーキャピタリストや著名投資家はなぜ今積極的に投資するのだろうか。
より多くのヒト・モノ・カネを宇宙ベンチャーに流し込む
グローバル・ブレインでベンチャーパートナーを務める青木氏は、元々は三菱電機の宇宙エンジニアであり、宇宙分野出身の唯一のベンチャーキャピタリストだ。
リードインベスターとしてアクセルスペースへの18億円の資金調達をまとめたが、その過程では「多くの投資家候補とのミーティングを重ねて、少しずつ理解を得て話をまとめてきた。宇宙はネットに比べて時間がかかり、また投資の桁も違う。その分インパクトが非常に大きい。そうした違いを理解し、長期的に見ていくことが必要」と話す。
他方、産業全体としては「ベンチャーキャピタル投資に加えて、日本でより大きな資金を集めるには大企業の力を借りる必要がある。宇宙関連企業や非宇宙企業からより多くのヒト・モノ・カネが宇宙ベンチャーに流れ込むようにしたい。アクセルスペースの資金調達では、ベンチャーキャピタルだけではなく、今後の事業展開を見据えて、大手事業会社が投資家として参加していることが画期的だ」と考えを示す。
筆者自身、投資家の方々の声を聴いて、改めて宇宙ビジネスのパラダイムシフトや宇宙ベンチャーの挑戦が今まさに進んでいることを感じた。将来大きな花となるには、ヒト・モノ・カネが集積するためのエコシステム形成に加えて、誰もが分かる成功例が期待される。米国ではSpaceXの成功が起業家たちに大きな刺激を与え、GoogleによるSkybox Imaging買収が投資家に1つの出口を示したと言われている。
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルが投資を始めた日本の宇宙ベンチャー業界。今後のさらなる発展に期待したい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
関連記事
- 日本初の試み、新宇宙ビジネスカンファレンスに込めた思い
10月末、日本で初めて民間による新宇宙ビジネスイベントが開催された。筆者は発起人の一人として企画委員会代表を務めたわけだが、なぜ日本での開催にこだわったのか、その背景をお伝えしたい。 - 深刻化する宇宙の「ゴミ問題」
地球低軌道上には破砕破片や人工衛星など、スペース・デブリと言われる「宇宙のゴミ」が100万個以上も存在するという。これが今、深刻な問題となっているのだ。 - Googleの月面ロボット探査レース、“第8の大陸”を目指す企業たちの狙い
月面無人探査を競う国際レース「Google Lunar X PRIZE」には、日本を含め全世界からさまざまな宇宙開発チームが参戦している。3000万ドルという賞金総額も魅力的だが、参加企業には別の狙いがあるという。 - イーロン・マスクら宇宙ビジネス開拓者たちの横顔
現在、宇宙ビジネスの最前線で活躍するのは、ベンチャー起業家や投資家が中心だ。彼らはいかにしてこの新市場を切り拓いたのだろうか? - 「はやぶさ」に続け! 今日本の民間宇宙ビジネスが熱い
小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げ成功に日本が沸いた。これまで日本ではこうした国家主導の宇宙開発プロジェクトが中心だったが、今や民間企業ベンチャーの参入が始まっているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.