市長が語る、「アジアのリーダー都市」を目指す福岡市の現在地:新連載・アジアの玄関口・福岡のキーパーソン(3/4 ページ)
古くから日本の玄関口として海外との交流が盛んだった福岡。そして今、ビジネスや文化などの面から「アジアのゲートウェイ」としての存在感が高まっているのだ。本連載では「福岡×アジア」をテーマに、それにかかわるキーパーソンの声を聞いていく。第1回は高島宗一郎 福岡市長だ。
規制改革によって、新しいビジネスを創出
――グローバル創業・雇用創出特区としての現状はいかがですか。
高島: 先日、福岡市が特区提案の当初から国に働きかけてきた創業人材のビザの規制緩和である「スタートアップビザ」を勝ち取ることができました。これによって海外からもチャレンジャーたちが福岡に来やすくなります。今、福岡市はグローバル創業・雇用創出特区として、スタートアップを支援していますが、これはただ単に創業・起業を盛んにすることだけではなくて、これまでにない新しい価値を生み出していくということを大きな目的としています。
福岡の歴史を見れば分かる通り、外部との交流、刺激というものが、その発展に大きく貢献してきました。この規制緩和によって日本と海外のアイデアや技術がぶつかり合って、化学反応を起こし、イノベーションにつながっていくことを期待しているところです。
今、民泊やUberなど、現在の法律ができた時点では想定されていなかったために、十分な対処ができていないシェアリングなどの新しいビジネスが盛んになってきています。ドローンを活用したビジネスもそうですが、こうした新しいビジネスが生まれてきたときに、即排除してしまうのか、それとも安全などを最低限確保した上で、ビジネスとしての可能性を模索するのかという2つの選択があります。
現状の日本では、新たなビジネスアイデアが出てきたときに、国や自治体の規制には既存の業界の意向が色濃く反映されます。時にそれは消費者の視点よりも既得権者の競争優位性を維持することに重きを置いているのではないかと疑問に感じることさえあります。
私はその原因は国や地方の意思決定層にスタートアップがいない、その代弁者がいないからだと思います。スタートアップには新しいアイデアはあっても、応援してくれる政治家を作る努力や霞が関へのロビー活動はほとんどしません。いくらネット上で正論を拡散したとしても、そのコミュニティーに本当の意思決定層はおらず、悲しいことにそれは現状を変革する実現可能性を高める力にはなっていないのが現実です。一方、既存の業界団体はその点において汗をかき、意思決定層に最も影響力を行使できるためのあらゆる努力します。イノベーションを起こす力はなくとも、業界でシェアを奪われないための経験上での知恵だとも言えます。
私はスタートアップと政治、行政が連携できたときに新しいマーケットが開けると思います。もちろん抵抗も相当でしょうし、かなりのパワーが必要ではありますが、福岡市はスタートアップの特区としてその架け橋として寄り添いながら、新しいアイデアと安全性などの両立を模索することができるロールモデルを作る舞台を提供していければと思っています。そして志を同じくするスタートアップ都市推進協議会に加盟する各地の首長たちと連携しながら、より多くの分野に風穴を空け、日本を前に進めていきたいと思います。
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