変わりゆく品川に息づく、カフェの温もり:新連載・人と人、人と街をつなぐカフェ(4/5 ページ)
「この街を活気付けたい」――。かつて宿場町として栄えた北品川の商店街で人々を迎えているカフェ。「クロモンカフェ」と「KAIDO books & coffee」のオーナーたちの思いを紹介したい。
8人でカフェを開業
クロモンカフェのすぐそば、商店街に面して広く扉を開放しているのがKAIDO books & coffee。コーヒーのおいしいブックカフェだ。
代表の佐藤亮太さんは生まれ育った品川を盛り上げたいと、5年前に(株)しながわ街づくり計画を創業し、品川をPRする仕事をしてきた。新築マンションの増加に伴ってファミリー層の住民が増える一方で、地元の店が利用されずに商店街が活気を失っていくさまを見て、8人のメンバーでカフェをオープンした。
「街には魅力的なお店が必要。カフェ1軒ができることは小さくても、起爆剤になれば」
元は金物店だったという建物をセルフリノベーションして、限られた予算の中で現代的なセンスの空間を作り上げた。店名の由来は「街道」である。
「全国各地を結ぶ街道は、地域とのつながり、人とのつながりを意味します。品川はかつて旅の起点として機能していた。そのストーリーをお店のコンセプトとして『旅に行きたくなるカフェ』を目指します」
バリスタが抽出するコーヒーは熊本県の若手新進ロースター「AND COFFEE ROASTERS」から常時数種類のスペシャルティコーヒーを仕入れるほか、月替わりで各地のコーヒーショップの豆を取り寄せて提供。コーヒーもカフェと全国各地を結んでいるのだ。カウンターには地元の菓子店が作る小さな焼き菓子「品川白煉瓦」も並んでいる。
書架にずらりと並ぶ本は、近くに店舗を構える「街道文庫」の蔵書で、コーヒーを飲みながらの閲覧も購入も可能だ。旅へと誘う紀行書からマニアックな本、気軽に読める雑誌まで新刊と古書をとりまぜて幅広く並んでおり、特に季節ごとのカフェの特別展と連動したセレクションは見応えがある。
この秋の特別展のテーマは長野県飯田市。佐藤さんたちは現地まで足を運び、古くから伝わる霜月祭を中心に据えて展示物を準備した。霜月祭は全国の神様を集めてお湯を献上するという珍しい祭事で、映画『千と千尋の神隠し』にも影響を与えたといわれる。
カフェには祭事に使われるお面や関連書が豊富にそろえられ、訪れた人の視線を引きつける。飯田市の地場産業である水引を使ったアクセサリー作りのワークショップも企画し、飯田市の高校生たちや飯田市水引組合の人々が講師を務めた。
そのほか、女性雑誌の編集長を招いて歩く旅の楽しみを語り合う「熊野古道ナイト」、移住を考える「愛媛ナイト」など、各地の人々との交流を深めるイベントが次々に開催されている。
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