連載
変わりゆく品川に息づく、カフェの温もり:新連載・人と人、人と街をつなぐカフェ(5/5 ページ)
「この街を活気付けたい」――。かつて宿場町として栄えた北品川の商店街で人々を迎えているカフェ。「クロモンカフェ」と「KAIDO books & coffee」のオーナーたちの思いを紹介したい。
街の記憶を未来へ
「旅のきっかけを作ると同時に、自分の暮らす街の素敵さに気付くきっかけを作りたい」
そう語る佐藤さんには、浅草で人力車の車夫として活躍していた時期がある。お客を乗せて街を案内しながら街の魅力に触れてもらう仕事は、KAIDOの原点ともいえるだろう。
浅草と品川の共通点。それはかつて「北の吉原、南の品川」と並び称される遊興地として賑わった歴史が眠っているということ。落語「品川心中」もそんな遊郭が舞台だ。
「今、子どもたちが何気なく使う『指切りげんまん』という言葉には、『飯盛り女』と呼ばれて遊郭で働かされた貧しい女性たちの哀しい思いが秘められているんですよ。遊郭の女性は裕福な男性に身請けしてもらうために、誠意の証として小指を切り落として送ったそうです」
そんな由来を知ると、見慣れた光景に変化が現れる。「新しいものの見方を提案したい」という佐藤さんの言葉通り、日常の街の風景が重層的な意味をもって立ち上がってくる。
クロモンカフェとKAIDO books & coffeeは、変貌してゆく品川の一角で、街の記憶と生き生きとした体温を人々にシェアしながら新しい世界への小さな扉を開いているのだ。
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