90年の人生で確信したリーダーの条件とは?:大田昌秀の「日本を背負って立つリーダーたちよ」(3/4 ページ)
研究者時代の長い海外経験、そして沖縄県知事として国内外の数多くのリーダーたちと交り合った経験などによって、大田昌秀氏が行き着いた理想のリーダー像とは。
琉球大学教授から知事に
米国留学を終え、日本に帰国した僕は、沖縄県の広報課長になる予定でしたが、ひょんなことから設立したばかりの琉球大学で学長秘書を務めることになったのです。
その後しばらくして、琉球大学の教授となりました。15年ほど務めていたところ、沖縄県知事選挙があるということで、いろいろな人が出馬してほしいとやって来ました。ただ、僕は政治になんてまるで興味がなかったので、絶対に出ないと断りました。なぜなら米国の国立公文書館に約20年通い続けて勉強していたので、知事選に出てる場合ではなかったわけです。
そうしたら4年後、また知事選に出てほしいという依頼が殺到しました。今度も断り続けていたら、あるとき沖縄社会大衆党(社大党)の委員長が自宅にやって来て、「あなたは新聞や雑誌に『沖縄はこうあるべきだ』と書いているではないか。自分の発言に責任を持って行動すべきだ」と問い詰めるわけです。
そこまで言われたら仕方ないと思い、知事選に出馬したら当選してしまったのです。1990年暮れ、65歳のことでした。
けんかはするが、相手を敬う
自分自身が沖縄県知事になったこと、さらには日本や世界のさまざまなリーダーに出会ったことで、改めて「リーダーとは何か」について考えることができました。
それまで学者をやっていて、いきなり政治の世界でリーダーになったわけですが、非常に僕が恵まれていたなと思ったのが、琉球大学に在籍した約30年間のうち13年ほどは外国にいたことです。外国で勉強する期間が非常に長かったので、外国のリーダーたちがやること、なすことをじっくり見ることができました。
そうした経験からも学んだのが、まずリーダーは相手と対等に議論できなければなりません。沖縄県知事になってから米軍や米国の政治家などとしょっちゅう激しい議論をしていました。「沖縄に基地を置くなんて米軍はけしからん!」などとけんか腰でやるわけです。ただ、米国人は自分の考えを直接ズバッと言うことを歓迎するのも知っていたし、日本的な以心伝心がまったく通用しないのも分かっていました。ですから非常に建設的な議論ができたと思います。
一方で、激しく議論はするけれども、相手との人間関係は大切にしてきました。相手の立場やその国の文化を尊重するのを疎かにしてはいけません。自分たちの文化が最も優れていると思い込んで、よその文化をバカにしたり、見下したりするのは言語道断です。
リーダーというのは、言うべきことはしっかり伝えるだけではなくて、相手との関係性を重視し、どうすれば政治や行政など自分のミッションがうまくいくかというのを人一倍努力して考えないと、到底その役目を果たすことはできないでしょう。残念ながら今の安倍政権にはそうした姿勢が見られないと感じています。
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