2016年の小売業界はどう動くべきか?(1/3 ページ)
店舗閉鎖、コンビニとの経営統合……。長らく業績が振るわない総合スーパーにとって昨年は大きな転換期だった。そして今後、小売業界全体はどのように進んでいくのだろうか。専門家が解説する。
小売業の盛衰に影響をおよぼすもの
総合スーパー(GMS)にとって、2015年は大きな転換の年であったといえるだろう。ユニーとファミリーマートの経営統合、イトーヨーカ堂の40店閉鎖検討、イオンリテールの全店改装報道、といったニュースは、GMSという業態が本格的な方向転換へと踏み込んだことを示している。
隆盛を極めた業態がその力を失った原因は何だったのか。みずほ銀行産業調査部では、こうした小売業界の変化の背景を分析し、およぼした影響についてレポートで考察した(関連リンク)。このレポートで示したことは、これまでの小売業態の盛衰に大きな影響を与えたのは、「モータリゼーション」であり、中でも女性の免許保有とパーソナルなクルマの普及であった、ということである。大まかに言えば以下の通りである。
小売業界の主役となる業態は、1970年代以降はGMS、2000年以降は専門店チェーンと変化してきた。こうした業態の変遷は、モータリゼーションの発展段階に応じて、消費者の生活動線が変化してきたことによって起こった。
クルマが一家に一台しかなく、女性の免許保有率が低かった、モータリゼーションの前半期には、週末にGMSでワンストップショッピングという買物スタイルが主流だった。しかし、カジュアル衣料品「ユニクロ」に代表されるようにロードサイドにコストパフォーマンスの高い専門店チェーンが現れ、女性に運転免許が普及すると、自由度を増した消費者の買物の選択肢は多様化し、ワンストップショッピングの引力は低下していった。伸び悩むGMSは、専門店チェーンを配したモールで同業間競争を継続することを選択したため、専門店チェーンの出店余地はさらに拡大し、商品ジャンル単位ではGMSを凌駕(りょうが)するまでに成長した、というものである。
こうした経緯が示すのは、小売業の盛衰に大きな影響をおよぼしたのは、消費者の行動を変える長期的な社会環境変化であり、業界環境だけを見ていても対応は難しかったということである。ただ、さまざまな社会環境変化のうち、将来何が小売業界に影響を与えるかというのを予測することは容易なことではない。できるとすれば、現在影響を及ぼしつつある「兆し」を抽出し、今後顕在化するだろう変化を想定することしかない。こうした兆しの中で今後の小売業界に最も影響を与えると考えられる「ICT環境の変化」について考えてみたい。
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