謎に包まれたトヨタの改革:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
昨年末に発売となった4代目プリウスは、トヨタの新たなクルマ作り改革であるTNGA(Toyota New Global Architecture)のデビュー商品となった。これは単にクルマ作りの手法が変わっただけでなく、トヨタの組織そのものにも変革を起こした。なぜそうしたことが実現できたのだろうか?
改革の手法
クルマの設計や生産には数多くの人が携わるので、そのそれぞれが「良いクルマ」あるいは「運転し易いクルマ」の定義が違っていては結果が出ない。だから同じリファレンスを共有しなくてはならない。これまでのトヨタ車の場合、何をリファレンスに選ぶかは主査任せであり、またそれを共有する体制作りも属人的だった。結果的にトヨタ全体で同じリファレンスを共有することができていなかった。それを共有したことこそがTNGAの核となる価値だと思う。
ではそのリファレンスの共有は、具体的にどのような改善手法によって得られたのだろうか? 筆者は何か特殊なグループツールのようなものによってそれが成し遂げられたのではないかと考えて、TNGAをとりまとめたエンジニアに聞いてみたのだが、そういうツールは特に導入していないという。ではどうしたのか? エンジニアの説明を聞くと、つまるところそれは「ホウ・レン・ソウ」であると言う。ずっと昔からある「報告・連絡・相談」という手法だ。
制度として明確な仕組みが作られたわけではなく、いわゆる現場の人間関係的な中で連絡要員に相当する係がふんわりと決まり、各パートごとの横連絡を取るようにしているのだそうだ。意外にもそこはローテクなのだ。しかし、筆者は納得がいかない。7万人の従業員を擁するトヨタが本当にそれだけで同じ方向を見て仕事ができるものだろうか? そう追及するとエンジニアは困ったように思案し、「最終的には日本人だからではないでしょうか」と答えた。
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