一円電車から6400キロ超えの弾丸ツアーまで 「鉄旅オブザイヤー2015」をおさらい:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
旅行会社による鉄道系企画旅行を品評する「鉄旅オブザイヤー」の表彰式が開催された。受賞作品、ノミネート作品から、旅行会社が取り組む市場が見えてきた。それは鉄道、旅に限らず、趣味性の市場に共通のキーワードかもしれない。
審査員特別賞は“鉄分”たっぷり
審査員特別賞は次点以下の作品の中から、審査員が推薦する作品が選ばれる。審査員が鉄道好きだから、マニアックな企画が好まれる傾向がある。
受賞作は2点あり、1つは『鉱石の道・一円電車保存車両を巡る「生野銀山・神子畑選鉱場跡&明延一円電車まつり 訪問の旅」』。兵庫県但馬地方にかつて存在した鉱山鉄道の遺跡を巡る旅だ。鉱石運搬用の鉄道だけど、地元の人々に便宜を図るため客車も運行した。運賃が1円だったことから一円電車として親しまれていた。
この鉱山鉄道は1987年の閉山と同時に廃止された。しかし、一円電車を愛用してきた人々の努力で車両が保存されている。しかも1両は動態保存だ。約70メートルの線路をバッテリーカーのけん引で走り、毎年4月から11月まで、月に1度体験会が開かれている。鉄道が廃止されたため、散在する保存車両や動態保存を順序よく見学するには不便。そこで団体企画旅行とし、貸切バスで効率良く巡れるように配慮した。主催は日本旅行の鉄道プロジェクト。鉄旅オブザイヤーでは常連とも言える。
もう1つはクラブツーリズムが催行した『懐かしの583系寝台列車と大曲花火 秋の章 2』。大曲の花火大会と言えば8月の「全国花火競技大会」が有名で、全国の花火師たちが技術を競う。一方、2014年から始まった10月の「秋の章」は、競技色よりも演出に力を入れている。地元の若手花火師や尺玉作り名人7人による割物花火競演、花火ミュージカルなど4幕構成となっている。
ツアーは花火を見るために、東京から新幹線で出発、北上経由でみちのくの小京都、角館を観光した後、大曲へ。花火大会終了後は寝台列車で東京に戻る。花火大会の余韻を抱きつつ、宴の後のわびしさを夜行列車で浸るという内容だ。夜行列車に使う583系は、日中は座席特急として、夜は寝台特急として使える車両だった。その機能を生かし、通路を挟んで片側は寝台、片側は座席のままとした。
通路を挟んだ1区画をベッドとリビングのように使う。このアイデア自体は583系のツアーでは何度か実績がある。今回はそれに加えて、花火と夜汽車の組み合わせがロマンチックだ。催行人員70人分についてはコールセンター受付開始後わずか20分で完売。その後、キャンセル待ちが160人に達したという。
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