街中にあふれる「公害コピー」をなくす方法:こだわりバカ(5/5 ページ)
過剰で無駄な言葉のせいで、本当に伝えなければいけない重要な情報が伝わらなくなっている「公害コピー」が街中にあふれている。このような公害コピーをなくすためには、どうすればいいのか。コピーライターの川上徹也氏によると……。
子どもや学生に「本当に効果がある言葉の授業」を!
先日、大阪に出張した時、こんなシーンに遭遇した。ある地下鉄の駅で、小学生の子どもたちが作った「放置自転車禁止」の手書きポスターがずらっーと貼られていたのだ。絵はかわいらしいのだが、そこに書かれたキャッチコピーはすべて「放置自転車禁止」「STOP放置自転車」「放置自転車ダメ」といった空気コピーばかり。
実際に、どうような指導をしてこのポスターが作られたか分からないが、「放置自転車禁止」と書いて自転車の放置が本当になくなると思っているとしたら、よほどおめでたいとしかいいようがない。実際その地下鉄の駅を上がった所には、山のような放置自転車があった。書いた子どもではなく、制作させた側に問題がある。
もし私が子どもにこのようなポスターを制作させるとしたら、こうするだろう。過去に1行で世の中の価値観を大きく変えた言葉の実例を示したあとに、以下のような制限をつけて考えさせるのだ。
「このポスターな、自転車を駅前に置いたらアカンというためのもんやけど、『放置自転車』『禁止』というような言葉を絶対使こたらアカンでぇ。それを使わんと大人がもう駅前に絶対自転車を放置せんとこ、と思わせるような言葉と絵を考えて書いてみぃ。制限時間今から30分や。よーいスタート」
人間は何でも自由に考えてと言われても、なかなかいいアイデアや発想は出てこない。
特に子ども・若者ではそれが顕著だ(もちろん例外は数多くある)。一定の条件で縛りをかけるほうが、面白い発想が出てくる可能性は高い。制約こそがアイデアを産み出すキッカケになるのだ。
前述の放置自転車禁止のポスターでも、何か縛りをかけて考えさせたら、大阪の小学生なんだから、きっと想像もつかないよう面白い言葉やアイデアをいっぱい出してくれるはずだ。
小学生に限らず、中学・高校・大学でも、もっと「人を心を動かす言葉の授業」を実施するべきではないだろうか? 若いころから「言葉で世界を変える技法」を学んでいたら、きっと日本の駅や道路の風景も変わるだろう。
プロフィール:川上徹也(コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表):
大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店に入社。営業局、クリエイティブ局を経て独立。コピーライター&CMプランナーとして50社近くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。
「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリー・ブランディング」という言葉を産み出した第一人者としても知られている。現在は広告にとどまらず、「言葉」を変えることで、企業団体・社会・制度などを輝かせる仕事に取り組んでいる。
著書は、シリーズ累計11万部突破の『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)など21冊。うち7冊は台湾・韓国など海外にも翻訳されている。
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