トランプという“大統領候補”をつくりあげたのは、誰か:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
「米国の大統領がトランプになったらどうなるのか。日本は大丈夫?」といった不安を感じている人も多いかもしれない。過激な発言を繰り返すトランプという“モンスター”をつくったのは、いったい誰なのか。筆者の山田氏によると……。
マスコミを巧みに利用してきたトランプ
米CNNの人気アンカーも以前、トランプとのインタビューを受け、「ここまで頻繁に取材に応じてくれる候補者はこれまでいなかったのではないか」と語っていたのを覚えている。確かに何か爆弾発言をすると、すべての主要メディアで惜しみなくカメラの前か電話で番組に出演し、発言についての質問に応じるのが恒例になっている。
また記者会見では毎回、質問をさえぎる勢いで応じ、記者もたじろぐほど高圧的だ。圧倒される記者との激しいやりとりは、見ていて面白いため、その日のうちにニュースで取り上げられる。
そうしてマスコミを巧みに利用してきたトランプは、自分をバカにしているメディア全体をうまく利用してきたから今の躍進がある。ちなみに最近リークされたトランプの携帯電話メッセージとされる録音では、彼がイデオロギーに関係なく著名なマスコミ関係者と個人的に親密にやりとりしている様子が明らかにされている。すべては彼の手のうちということか。
ちなみにトランプはFacebookやTwitter、Instagramでのフォローや反応を新しい”視聴率”であると認識しており、重要なキャンペーンツールとして活用している。以前、雑誌のインタビューで世論調査よりもこうした”視聴率“がすべてだと語っていた。
そして今、共和党指名候補レースでトップを走るトランプを見て、誰よりも焦っているのは共和党だと言える。初めからトランプを無責任な言動で自滅すると過小評価してきた共和党は、今になって大変なパニックに陥っている。
米タイム誌は、共和党は今さらながらトランプを指名争いから引きずり降ろしたいようだと指摘する。しかし、もし3月15日にトランプが勝利すれば、その勢いはもう止まらなくなるかもしれない。そう考えれば、共和党にとって猶予はあと2週間もないのだ。
共和党による反トランプの動き、つまり「身内潰し」は激しさを増している。まず元副大統領候補で下院議長でもある共和党のポール・ライアンは、トランプが白人至上主義団体「クー・クラックス・ クラン(KKK)」の指導者からの支持を明確に否定しなかったことを強く批判した。これを皮切りに、2008年大統領選の共和党候補ジョン・マケイン上院議員や、2012年共和党候補のミット・ロムニーなど党の大物が次々と、トランプに不快感を示し、これでは大統領選に勝てないと危機感を表明している。反旗の狼煙を上げている面々は、そうそうたるメンツである。
ちなみに、マケインもロムニーも大統領になれなかったので、トランプから「ダメ候補者だったくせに」と、格好の標的になっているのは言うまでもない。
さらには、著名な共和党政治家の2人が、トランプが共和党候補になっても彼に投票しないと宣言して話題になっている。米CNNと調査会社の調べでは、共和党上院議員や知事などにトランプが指名候補になれば支持するかどうか尋ねたところ、48%が「ノー」と答えている。党員からはトランプが勝利すれば離党するという動きも出ており、もはや共和党はトランプの躍進で崩壊の危機にすら瀕している。
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