トランプという“大統領候補”をつくりあげたのは、誰か:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
「米国の大統領がトランプになったらどうなるのか。日本は大丈夫?」といった不安を感じている人も多いかもしれない。過激な発言を繰り返すトランプという“モンスター”をつくったのは、いったい誰なのか。筆者の山田氏によると……。
“米国の終わり”にはならない
そこで今、第三極(二大政党の民主党、共和党ではない、第三の党)を共和党議員が中心に立ち上げて、大統領選に別の選択肢を用意するという動きもある。またロムニーなどを独立候補として擁立する動きも話題になっている。
とはいえ、共和党としては、何とかトランプを止めるために反トランプの票が割れないように対抗馬を絞るべきといった声も出ている。現時点では、トランプを止めることができるのは2位のクルーズしかいないと見られている。また、マルコ・ルビオ上院議員と、オハイオ州知事のジョン・ケーシック候補が手を組むべきと言う専門家もいる。
今さら、トランプの資質について詳しく語るつもりはない。ただ改めて見てみるとトランプの暴言は枚挙にいとまがないが、とにかくメディアにとり上げてもらうことが戦略なので、批判されようが本人は痛くもかゆくもないのだろう。
例えば、大規模に減税しながら社会保障を維持しつつの軍事費増化(財源は不明)、イスラム教徒の入国を禁じる(外交官やビジネスマンはどうする?)、IS(イスラム国)のメンバーの家族を攻撃する(これは戦争犯罪に当たる)といったものだ。さらに、メキシコ国境に壁を造ると言ったり、女性アンカーに対する性的発言、自らの“モノ”の大きさに言及したり、女性関係の武勇伝などなど――とにかく話題に事欠かない。
冒頭で触れたが、こんな言動を繰り返すトランプが「大統領になったらどうなってしまうのか」という問いの答えは、まず、彼が大統領になるまでの道のりは長く、まだまだ分からない、ということになる。ただ共和党の大統領候補になる可能性は、共和党が早く何か手を打たない限り、かなり高いと言える。
だが少なくとも、これだけは言える。万が一トランプが大統領になっても、彼の言っている暴言はほとんど実現できないと考えられるので、例えば“米国の終わり”ということにはならない。国家の根幹である憲法や法律があるし、大統領の政策や決定の多くには議会がチェック機能も果たす。現状では、大統領選と同時に改選される議会で共和党が過半数を占めたとしても、トランプを反対する共和党議員が少なくないことは間違いない。
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