クレームから生まれたある女性ファンとの絆:「よなよなエール」流 ガチンコ経営(5/5 ページ)
地ビールブームが去り、売り上げが激減したヤッホーブルーイングにとって、再び事業を立て直すきっかけとなったのがネットの通信販売でした。今回は、販促のためのメルマガを巡り、顧客との間に起きた“大事件”を紹介します。
本当に、ほんとうに、ホントウに、ビッッックリしました!! まさか井手さんが、レストランの予約日時を調べ上げ、網を張り、待ち伏せしていようとは……夢にも思いませんでした!
注文したよなよなエールがテーブルに運ばれてきて、そこに何やらカードも置かれ、「井手直行」の文字を見つけたとき、単純に「あぁ、井手さんがここのスタッフの方に頼んで、メッセージカードを残しておいてくれたんだわ」と思いました。
ところが、もう1枚置かれたカードを見ると、「お会いできて嬉しいです」――。(えっ? お会いできて……?)と、横に立っている人を見上げると、「どうも、初めまして。井手です」と、そこには紛れもないご本人が!
この休暇中の 最も印象深い強烈な思い出は、「井手さんにお会いしたこと」です。 このことは「9・14井手ショック」として、毎年この日がくるたびに 思い出し 話題に上ることでしょう。
もちろん、とてつもない驚きを受けたのみではありません。お忙しい日々の中で、私たちの来店日時を調べ、メッセージカードを用意し、当日わざわざ足を運んでくださり、自らビールを提供までしてくださった――井手さんのそのお心遣いが、本当にありがたく、とても嬉しかったのです。
とても幸せな大サプライズでした。心から感謝しています!
このメールを見た瞬間、感動して涙があふれ出てしまいました。お客さんも恐らく長い間わだかまりが残っていたと思いますが、こんな感動体験を共有することになろうとは夢にも思いませんでした。その後もこのお客さんは、よなよなエールを愛飲してくれているだけでなく、たまにサプライズ会場になったホテルにも泊まり、この時のエピソードをホテルスタッフに嬉しそうに話してくれるそうです。
私がこの体験から学んだことが2つあります。1つ目は、クレーム1つ1つに対して返信するという、一見非効率な対応だけれども、それが信頼関係を作り、よなよなエールのファンになり続けてくれたのです。さらに、多くの友人などによなよなエールを勧めてくれる、神様みたい存在になってくれたということ。結果的に、私が費やした労力よりもはるかに大きな利益と感動を返してもらいました。
もう1つは、1人のファンを満足させることができなければ、その先の1万人、10万人、100万人と、さらに多くのファンを満足させることなんて絶対にできないということです。どんなに忙しかろうと、どんなに会社の規模が大きくなろうと、それはずっと変わらない価値観として私の心に刻み込まれました。
このファンとの素晴らしい感動体験は、今の私の顧客対応の原点となっています。次回は顧客という枠を超えたファンとの絆ができた、もう1つの知られざるエピソードを紹介します。
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