クレームから生まれたある女性ファンとの絆:「よなよなエール」流 ガチンコ経営(4/5 ページ)
地ビールブームが去り、売り上げが激減したヤッホーブルーイングにとって、再び事業を立て直すきっかけとなったのがネットの通信販売でした。今回は、販促のためのメルマガを巡り、顧客との間に起きた“大事件”を紹介します。
クレーム内容が変化
そんなやり取りが数カ月間続いたころでしょうか。ある時からクレームの内容が少しずつ変わってきたのです。メールが来るのは変わらないのですが、怒っているというよりはアドバイスをしてくれている、という感じになったのです。
例えば、「この表現は上から目線で気になります。私は嫌いです。もっと工夫した方が良いですよ」といった形です。それとともにメール自体の頻度も減っていき、ついには来なくなりました。「理解してくれたのか? それとも、もう面倒でメールするのが嫌になったのか?」というモヤモヤ感が残りました。
それから2年ほど経ったある日、メルマガに返信する形で久し振りにこのお客さんからメールが届いたのです。今度軽井沢にある私たちのグループ会社のホテルに泊まりに来て、レストランでよなよなエールを飲むのを楽しみにしている、という内容でした。私はそのメールを見た瞬間、このお客さんに、長年迷惑を掛けたおわびにサプライズプレゼントを贈りたいと思い、ある計画を立てることにしました。
グループ会社のホテルに電話をかけ、このお客さんとの今までの経緯を説明し、驚かせたいのでいつレストランを予約しているのか、ということを教えてもらったのです。そして当日。私はそのお客さんがレストランに来る2時間前から現地で待機し、レストランの制服を借りて着替えていました。顔も知らないそのお客さんが来たら密かに教えてもらい、よなよなエールの注文が入ったら私がビールを注いで持っていき驚かせよう、という計画を立てたのです。
結果、そのサプライズは大成功でした。後日送られてきたお客さんからのメールを見て、予想以上に喜ばれたことを知りました。そのメールの一部が以下です。
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