寝台特急「カシオペア」が復活、次は東北・北海道新幹線の高速化だ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
東京と札幌を結ぶ寝台特急「カシオペア」が早くも復活する。2016年3月、北海道新幹線の開業を理由に廃止された列車が、なぜ北海道新幹線開業後に復活できたか。その背景を考察すると、北海道新幹線の弱点「東京〜新函館北斗間、4時間の壁」も克服できそうだ。
タテマエを崩して高速化を
こうなると、次の期待はもう1つのタテマエだ。東北新幹線の高速化である。東北新幹線の盛岡〜新青森、北海道新幹線の新青森〜新函館北斗間の最高速度は時速260キロメートル。しかし、はやぶさに使われているE5系(北海道新幹線はH5系)の最高運転速度は時速320キロメートル。その性能を盛岡以北では発揮できない。
なぜかと言うと、「整備新幹線の建設規格は時速260キロメートル」というタテマエがあるからだ。国民の税金を原資に建設する整備新幹線に、過剰な設備を与えられないという考えがあった。さらに、整備新幹線の計画時、東海道新幹線は時速210キロメートルだった。時速260キロメートルは、当時は先進的な規格だった。しかし、その後は技術の進歩が追い越し、時速300キロメートルを超える運行が可能になっている。
東海道新幹線は時速210キロメートルで設計されて(関連記事)、現在は時速285キロメートルで走っている。その後の車両の性能向上や、線路のメンテナンスと合わせた改良工事によって実現した。山陽新幹線も時速210キロメートルから時速300キロメートルに向上した。東北新幹線の盛岡以南は時速320キロメートルで走っている。これらは国鉄時代に作られた路線で、整備新幹線のタテマエが適用されていないからだ。車両の軽量化によって、線路が耐えられる速度が上がっていることも功を奏したと思われる。
もちろん、時速260キロメートルを前提に建設された線路で、そのまま時速320キロメートルというわけにはいかないだろう。線路が耐えられても、沿線の騒音対策などを再検討する必要はある。しかし、国鉄時代に建設した古い線路より、新しい線路のほうが低規格とは情けない話だ。技術的な可能であればすぐにでも高速化へ向けて動くべきだ。
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