日産自動車の“二律背反”:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
増収増益と好業績を上げている日産自動車だが、実はそれをけん引しているのは海外での取り組み。ここ数年、国内での新型車の投入はほとんどないのが実態だ。
注目のマーチ・ボレロA30
そんな日産の未来を左右する正念場に、突如おもしろいモデルがデビューした。日産のグループ企業であるオーテックジャパンの創立30周年を記念するモデルとして発表された「マーチ・ボレロA30」である。このクルマは、日産マーチをベースに適法に改造を施し、いわゆるコンプリートカーとして販売される。注目ポイントは職人手組みのエンジンと、80ミリメートルのワイドトレッド化。クルマの走行性能を上げるのに、トレッドの拡大はてき面に効く。明らかにそういう勘所が分かった人が作ったクルマだ。乗って楽しいモノになっているだろうことは容易に想像できる。
オーテックジャパンが手掛けたマーチと言えば、好事家は2003年にデビューした「マーチ12SR」を想起するだろう。マーチ12SRはたった1200ccのエンジンとローコストの改修でクルマが信じられないほどスポーティに変わること、そして、そういうクルマがロイヤリティユーザーを熱狂させることを証明してみせた。それはオーテックジャパンのチューニングカーとしてスタートしながら、日産の正規カタログモデルに昇格したことで実証されている。マーチのスポーツモデルは、初代モデルの「マーチ・スーパーターボ」以来、日産のスポーツマインドを下支えしてきた歴史があるのだ。
しかし、マーチ・ボレロA30は、現時点ではオーテックジャパンのクルマであって日産のクルマではない。販売にしたところで4月11日から5月9日の間に同社のホームページから商談申し込みを受け付けて、抽選の上、30台のみ生産するという限定的なモデルに過ぎない。日産の国内販売のグランドデザインには現時点では微塵(みじん)も関係ないのだ。
関連記事
- 「変わらなきゃ」から20年 日産はどう変わったのか?
昔からの日産ファンにとって、近年の同社の状況は何とも物足りないと感じているのではないだろうか。なぜ日産はこのように変わってしまったのか。 - 検証! 日本の自動車メーカーがやるべきこと
これまで数回にわたり日本の自動車メーカーの戦略を論じてきた。今回はその総括と、これから先に国産メーカーが進むべき道筋を考えたい。 - スポーツカーにウイングは必要か?
数年前から相次いで復活しているスポーツカー。スポーツカーと言えば、エアロパーツが象徴的だが、果たしてウイングは必要なのだろうか? - ついに「10速オートマ」の時代が始まる
オートマ車の変革スピードが加速している。以前は4段ギア程度がわりと一般的だったが、今では5段、6段も珍しくない。ついにはホンダが10段のトルコンステップATを準備中なのだ。いったい何が起きているのか。 - 「週刊モータージャーナル」バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.