災害取材を行うマスコミが、現地で非常識な行動をとる理由:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
関西テレビ放送の中継車が、被災地のガソリンスタンドで給油待ちをしていた車列に割り込んだことが発覚した。過去にも被災地でマスコミの非常識な行動が問題になっているが、なぜ彼らは“迷惑”なことをしてしまうのか。筆者の窪田氏によると……。
非常識極まりない行動
デイリースポーツの取材に応じた関西テレビ広報によれば、取材クルーは宿泊先の熊本市内を朝出発し、被害が大きかった益城町に向かう途中だった。中継や取材素材送信の作業などで時間が切迫していたことで、割り込みを行ったという。
この日は朝から各局が益城町から中継を行っている。「後発」の関テレクルーらの尻に火がついていたのは容易に想像できる。とにかく早く現地に急行し、倒壊した家屋など「地震の爪痕」を見つけなくてはいけない。インタビューに応じる被災者も必要だ。レポート原稿やカメラ割りなど中継の段取りも考えれば、チンタラしている場合ではない――。
つまり、彼らが割り込みという非常識な行動をとった背景には、「被災者の論理」より「マスコミの論理」を優先させてしまうからなのだ。この論理とは一言で言えば、とにかく「分かりやすく派手な被害」を伝えることこそが正義だという考え方である。
被害を免れた建物より、倒壊した家屋。安堵の笑顔より、不安に怯える表情。命からがら逃げた人にマイクを突きつけ、「どうですか? 怖かったでしょう?」とやる。こういうことが「優先すべき仕事」になってしまっているので、ガソリンの給油待ちをしている被災者の姿が見えないのだ。
ただ、マスコミのみなさんをかばうわけではないが、彼らがこのような「分かりやすく派手な被害」に固執してしまうのは、「性」(さが)というか、「絶対に完治しない病」のようなものだと思っている。
もうずいぶん前になるが、まだ記者をやっていたとき、北海道の有珠山(うすざん)が噴火をして現地で取材をしたことがある。噴煙は地上3000メートルまでのぼり、国道も寸断。近隣住民は避難を余儀なくされるという大きな災害だった。
道内はもちろん、日本中でさまざまなイベントが「自粛」された。「日曜洋画劇場」で放映されるはずだった火山を舞台にしたパニック映画『ダンテズ・ピーク』も他の映画に差し替えになって、連日のように噴火の様子や、避難所で疲弊した被災者の様子が報道された。
ただ、これは現地にいた人間からすると、かなり違和感があった。噴火2日前に近隣住民ら約1万人を避難させたおかげで、人的被害はゼロ。洞爺湖温泉(とうやこおんせん)という「観光の街」ということもあり、中には「噴火に負けるか!」と声を掛け合って、元気な被災者も多くいたからだ。
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