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国内住宅の40%が空き家になる? それでも「空き家ビジネス」が難しい理由消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方(10/10 ページ)

“民泊”を筆頭に盛り上がりを見せつつある「空き家ビジネス」。今後数十年で多くの国内住宅が空き家になると見込まれる一方、日本ならではの課題もある。そのポイントを分析してみたい。

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 買い手にとって重要なのは移住後の生活だ。例えば、単身シニアが安心して暮らせるようなコミュニティーや、小売雑貨店や病院などの生活インフラ、バスや乗り合いタクシーといった交通インフラを整えるほか、企業を誘致して雇用を生み出すといった施策も求められる。

 観光客向けに空き家を貸し出すビジネスの場合も同様だ。魅力のある地域でなければ、客は当然リピートしない。この対策例として、大京穴吹不動産は、貸し出すマンションの近隣飲食店と連携したサービスや、近畿日本ツーリストグループと共同で長期滞在のメリットを生かした旅行プランの提供などに沖縄で取り組んでいる。

 空き家仲介ビジネス業はこれから、空き家という「モノ」を仲介するビジネスから、地域社会や経済全体のグランドデザインを描き、提供するビジネスに変革していくことが求められるだろう。

 空き家取り引きの総合プラットフォームが登場して普及すれば、不動産業者が得る仲介手数料収入は今後ますます減ることになる。これは空き家に限らず、中古物件全体を巻き込んだ動きになる可能性もあるだろう。

 それに備えるためにも、不動産仲介業は事業を再定義し、売り主・買い主のよろずサポートビジネスや、地域のグランドデザインを描いて提供するようなビジネスなど、多種多様なビジネスの種をまくことが求められている。

著者プロフィール

小林宏充(こばやし・ひろみつ)

株式会社JMR生活総合研究所でプロジェクト・マネジャーとして、自動車や電機、サービス業界などの事業戦略の策定・実行支援を主に担当している。理論と事例、データ分析を駆使して、企業の戦略課題の解決に精力的に取り組む。

JMR生活総合研究所

市場リサーチや顧客企業への戦略コンサルティングのほか、マーケティング情報サイト「J-marketing.net」を運営。マーケティングや戦略経営に関する豊富な記事を無料会員向けに提供している。


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