国内住宅の40%が空き家になる? それでも「空き家ビジネス」が難しい理由:消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方(3/10 ページ)
“民泊”を筆頭に盛り上がりを見せつつある「空き家ビジネス」。今後数十年で多くの国内住宅が空き家になると見込まれる一方、日本ならではの課題もある。そのポイントを分析してみたい。
加速する「空き家ビジネス」 その3つの業態とは
だが、管理が行き届いていない空き家が増えると、地域の景観を損ねるだけでなく、倒壊や火災のリスクが高まったり、害獣や害虫が繁殖して衛生環境が悪くなったり、犯罪者のたまり場になったり――と、周辺地域住民に与える害も大きい。
そのため、国や自治体は空き家対策に力を入れ始めている。その一例を紹介しよう。
1.空き家に対する税制優遇措置の撤廃
2015年施行の「空き家対策特別措置法」では、隣接地に危険が及ぶ場合など「自治体が定めた特定の空き家」に対する固定資産税の優遇を廃止。また、所有者が自治体の是正勧告を無視する場合、取り壊し費用を所有者負担にできるようになった。
2.減税や補助金
これまで、空き家の買い取りや再販は通常の不動産売買より税負担が重く(事業者が中古住宅を買い取る際に不動産取得税が掛かり、事業者が改修した住宅を販売する際には登録免許税が掛かる)、それが空き家の処分を阻む一因になっていた。
そこで、政府は2014年に登録免許税を0.3%から0.1%に引き下げ、2015年には不動産取得税を減税する特例措置を導入。一部の自治体では、空き家改修費を補助するといった動きもある。
3.「民泊」の規制緩和
2015年の訪日外国人は過去最多の1974万人に達した。その影響で、都心を中心に宿泊予約が取りづらくなったり、宿泊費の高騰を招いたりしている。
政府は民間の空き家や空き部屋の活用を目指し、東京・大阪などの国家戦略特区に限って、7〜10日以上の宿泊等の条件付きで、旅館業法の適用除外とする“民泊”を認めている。
こうした政府や自治体の動きに後押しされ、さまざまな業界で“空き家ビジネス”が生まれつつある。大きく分けると以下の3つだ。
- 空き家貸し出しビジネス
- 空き家買い取り/再販ビジネス
- 空き家管理/メンテナンスビジネス
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