新型パッソ/ブーンで見えたダイハツの実力:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)
ダイハツの新型パッソ/ブーンに試乗して実感したのは、同社の高い見識と技術力だ。そしてもう1つは、ダイハツを完全子会社化したトヨタの戦略眼の確かさである。
新型パッソ/ブーンに試乗してきた。はっきりしたことがある。
1つはダイハツの高い見識と技術力である。そしてもう1つはトヨタの戦略眼の確かさだ。これから先20年の世界戦略をともにする相手として、トヨタは素晴らしいパートナーを手に入れたと思う。あちこち浮気をすることなくダイハツを信頼してその実力を十分に発揮できるようサポートしてほしいと思った。
ただ、この冒頭の文章を読んで「そうかパッソ/ブーンは買いなのか!」と早合点しないでほしい。真面目で良心的な開発が行われたクルマとして筆者は感動し、拍手を送りたいと思ったのだが、1つだけどうしても看過できない大きな問題があった。
それはあまりにも過大なペダルのオフセットである。自動車ユーザーとしての読者に誤解を与えないことも大事なので、最初に書いておく。ただし、本来的なこの記事の趣旨はパッソ/ブーンが世界の自動車マーケットにとって何なのか、そして日本の自動車産業をもっと強くする主戦力の1台に成り得るかを解き明かそうとするものだ。コンシュマーレポートではない。
アジア戦略車のインパクト
パッソ/ブーンは、世界で最も小さいクラスの自動車である。自動車の自然発生的なサイズで言うと、トヨタ・アイゴ、フォルクスワーゲンup!、フィアット・パンダあたりと並んでボトムエンドを受け持つ。「軽自動車があるじゃないか」と言う人がいるだろうが、あれは法規の枠組みが作った特殊なクラス。国に例えれば、交易上の地勢的メリットもないのに登記上の企業がひしめくタックスヘイブンみたいなものだ。超小型サイズで激しく過当競争を繰り返してきた中で鍛えられた高い技術の集合体としては誇って良いのだが、税のインセンティブがない状態で小型車を作ったらあのサイズと排気量にはならない。
つまり、パッソ/ブーンこそがグローバルに見た最小クラスのクルマなのだ。だから、筆者は今回、国内仕様であるパッソ/ブーンの試乗会だと思っていない。トヨタグループのアジア戦略車「プロドゥア・マイヴィ」のベース車を検分しに行ったつもりである。
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