カリカリまだある? 母のカレーが生んだ北海道のヒットメーカーに迫る(3/3 ページ)
北海道のお土産市場は厳選区。そのような中、58歳からお土産プロデューサーとしてヒット商品を連発し、数年で年商25億円を売り上げている面白い男がいる。
“よそ者”だから今までにないものを作れる
ヒット商品はどのようにして生み出されたのか。勝山さんは「お菓子業界を知らないからこそ新しいものが生み出せる」と語る。同社は、生産工場を持つメーカーと組むことで、あくまでプロデュースに特化する。工場の生産ラインを知らない“よそ者”がアイデアを出すからからこそ、今までにない商品が生まれるのだという。
「業界の知識が少しでもあると『こういうものは売れない』『作れない』という先入観が邪魔してしまいます。知らないからこその強みがあるわけです」(勝山さん)
実際、同社が開発するお菓子は独特な製法だ。例えば、カレーせんべいの場合、カレー粉を振りかけるという製法が一般的といわれているが、同社は勝山さんの作った“カレーソースを浸す”ことで味をつけている。「カレー風味ではなく、カレーそのものを味わえる商品にしたかった」(勝山さん)
“お土産作りは料理”という考え方で、「oh! 焼きとうきび」の開発ではコーンを砕いたパウダーを振りかけたおかきに加え、フリーズドライにした実際のコーンも入れた。
当時、せんべいをカレーソースに浸したり、おかきと一緒に実際のコーンをいれる製法を提案された食品メーカーは「おいしくするためにそこまでするのか」と驚いたそうだ。生産が非効率になる上に、その上新しく設備投資をする必要もあったからだ。
しかし、勝山さんは「食べたときに、本物の焼きとうきびやカレーを食べたような感動を与えたい」として、料理人の考え方・技術をそのままお土産に適応したのだ。
「メーカー側はどうしても効率的かどうかを無意識に考えてしまいますが、我々は単純に『こんなのがあったら良いな』で考える。業界の中にいる人間と、外にいる人間の考え方が良いバランスで合わさることで、今までにない商品が生まれるのだと思います」(勝山さん)
そして、今までないものかどうか、オリジナリティはどこにあるのか、勝山さんはそれを何よりも強く意識する。
「当たり前のこと、今までと同じことをやっても、当たり前(普通)の商品しか生まれません。我々は実績のある老舗企業ではありませんから、同じ戦い方をしても勝てません。『新しさ』がなければ、消費者は安心・安定の定番商品を選びますので」(勝山さん)
今年で65歳になるが、年齢を感じさせないそのパワフルな挑戦心も成功の要因だろう。「気持ちが若ければ何年経っても老いることはありません。自分がどこまで通用するか試していきたいです」――そう語る勝山さんは、ソフトクリームの開発にも着手するなど、次々と新しいことに挑戦している。10年後、20年後も大ヒット商品を出し続けていそうだ。
関連記事
- 年間売り上げ100億円 なぜ売れ続ける「白い恋人」を作れたのか
1日に90万枚を製造し、年間売り上げは約100億円。北海道のお土産売り上げランキングでは毎年のようにトップの位置にいる。そんな“お化け商品”白い恋人はどのようにして誕生したのか。石屋製菓の担当者から詳しい話を聞いた。 - これぞ町工場の底力 廃業の危機を救った「おじいちゃんのノート」とは
あることをきっかけに、たった数カ月で創業以来最高の売り上げを出した中村印刷所。一体何があったのか。当時のことや、これからのことを社長の中村さんから詳しく聞いた。 - 高くても売れる平田牧場の豚肉はこうして生まれた
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。今回は「平牧三元豚」などのブランド豚で有名な平田牧場について読み解く。 - 最初はまったく売れなかった明太子、どうやって福岡から全国区に?
日本で最初の明太子メーカーが、福岡市中洲に本社のあるふくやだ。創業すぐに明太子の販売を始めたが、実に10年間も鳴かず飛ばずだったという。そこからいかにして明太子は福岡の名産品にまで育ったのだろうか。 - 10万円でも即日完売 大人が使うランドセルはどのようにして生まれたのか
大人向けのランドセルに関するニュースをここ最近よく耳にするようになった。その中でも、土屋鞄製造所の「OTONA RANDSEL」がいまスゴいことになっているという……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.