「TRAIN SUITE 四季島」の価格は世界トップクラス、サービス内容は見合っているか?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)
JR東日本がクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の運行概要を発表した。同期デビューの「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」、運行中の「ななつ星in九州」と合わせて、「クルーズトレイン御三家」が出そろった。お互いにライバル、そして海外の観光列車との競争になる。
韓国のクルーズトレイン「ヘラン」は、2泊3日のツアーで122万〜150万ウォン(約11万4000円〜14万円)。オーストラリア大陸横断鉄道「インディアンパシフィック」の一等個室は3泊4日で2569オーストラリアドル(約20万5000円)。カナダ大陸横断鉄道「カナディアン号」のプレステージ個室は3泊4日で8701カナダドル(約73万5000円)。アムトラック「サンセット・リミテッド号」3泊4日の個室は830米ドル(約9万円)、ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレスのベニス〜パリ〜ロンドン線は2210ポンド(約35万円)だ。
日本のクルーズトレインは、海外の豪華列車の相場からしてもトップクラスである。JR九州もJR西日本もJR東日本も、高額という批判を恐れて値引きを検討する必要はない。むしろ、価格に見合ったサービスの向上を続けるべきだし、新たなサービスに見合う値上げをしていくくらいの気概がほしい。富裕層の関心は価格ではなく、どれだけ心地よくしてくれるか、楽しませてくれるか、というサービスの内容だ。
そして重要なことは、こんなに小さな島国に、3種類もクルーズトレインがあることだ。どの列車もコースが重複していない。それは互いの競争を生むと同時に、海外のクルーズ旅行客にとって魅力的な選択肢となる。
2017年、日本はクルーズトレインを3本も走らせる「観光列車立国」になる。この3本の矢は、世界のセレブに訴求できる。3つとも乗っていただくと、日本という国の魅力を存分に理解していただけそうだ。
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