銀座のホステスに学ぶ「チラ見せ術」:銀座で学んだこと(3/3 ページ)
前回、「お客さまは神様ではなく王様」というお話をしました。王様の気分を害すことなく、自然に売り込みができる営業トークとはどういうものでしょうか。
ホステスの“チラ見せ術”とは
どんなにプッシュしたい商品やサービスであっても、“チラ見せ”のほうが効果を発揮する場合があります。例えば、デパ地下の試食やエステの1日体験も、お試しという名のチラ見せです。
最後に、ホステスのチラ見せ術を少しだけご紹介いたします。
銀座のほとんどのクラブは、基本的に20時に開店します。20時すぎに、お客さまから「今、同伴中ですか?」というお電話をいただいたと想像してください。実際、あなたは今、別のお客さまと食事を終えてそろそろ銀座に向かおうとしています。
この場合、あなたならなんとお返事しますか? 下の2つのパターンから選んでください。
A: はい、同伴中です。今夜、お顔を見せていただけるのですか?
B: 今、赤坂から向かっています。お顔を見せていただけるのですか?
「『同伴ですか?』と聞かれているのだから、答えはA」と思うかもしれませんが、この場合の“チラ見せ”はBです。同伴中ですか? と質問されたお客さまには「お店に行こうと思っている」という気持ちがあります。ですから、「同伴中だ」とハッキリ答えてしまうと「なんだよ。同伴中なら店に行っても……」と思って、別のクラブに行ってしまうかもしれません。
仮に「同伴じゃない」とうそをついてお店に来てくれるように返事をしても、店の入り口やビルのエレベータなどで同伴中のお客さまとバッタリ会うかもしれません。そうすると非常にイヤな雰囲気になってしまいますから、うそをつくのは得策ではありません。
一方、Bの返答は決してうそはついていません。前後の話を割愛して現状を伝えたまでですから、もしビルの下で連絡をくれたお客さまとバッタリ会っても、うそをついているわけではありませんから、ムードはまた変わってきます。
連絡をくれたお客さまが「こいつ、やっぱり同伴だったのかよ〜」と思ったとしても、イヤな雰囲気になる可能性は低くなります。結果、Bの返事をしたホステスは、同伴のお客さまとご連絡いただいたお客さまを店にお連れすることができるのです。
このように、ときには1から10までお伝えしないというのも、1つの方法かもしれませんね。
桃谷優希氏のプロフィール:
1988年10月16日大阪府生まれ。16歳のときに処女作『デリンタ(悪魔の子)と呼ばれた天使たち』(文芸社)でデビュー。このほか『国民の声』(文藝書房)に寄稿、『罪追人』(文藝書房)がある。
京都ノートルダム女子大学卒業後、北新地のクラブへ。その後、銀座に移籍。銀座40周年の老舗「クラブセントポーリア」でナンバーワンの座を手にして、その後26歳の誕生日に某有名店のママに就任。2015年12月、銀座7丁目にクラブ「城」をオープン。
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