舛添知事の“お金”の使い方に、なぜ不満を感じるのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/6 ページ)
舛添都知事が政治資金の使い方をめぐって揺れている。海外出張にかなりの費用をかけているが、海外から見ても法外なのだろうか。実は米国でも州知事が海外へ出張して、ちょこちょこ問題になっているのだ。だが……。
知事が出張で海外に行く理由
米国でも、グローバル化が進むにつれ、知事が海外に出張することが増えている。ただ米国では、知事が海外に行くことに対する目はシビアである。というのも、知事の海外出張は、州に恩恵を与えるビジネスに絡んでいることが前提だと見られているからだ。
ただそれゆえに出張の評価はしやすく、メディアがその成果などを報じることになる。例えば米国で最近評価の高い知事としては、テネシー州のビル・ハズラム知事がいる。
テネシー州はもともと日本や韓国、中国といったアジア諸国の企業が多く進出している。その後押しをしてきたのが同州の歴代知事だ。現在のハズラム知事は2014年6月に日中韓を歴訪し、その成果として、日本だけでタイヤメーカーのブリヂストンが同州に2億3300万ドル規模(254億円:1ドル109円換算)の拠点を作ることに合意したと発表し、自動車部品メーカーのデンソーは同州内で8500万ドル(92億6000万円)の追加投資に合意、日産も部品部門で1億6000万ドル規模(174億円)のプロジェクトの立ち上げを発表している。
もちろんこうした合意には事前の交渉などがあり、決してハズラムだけの手腕ではない。それでも日本に来日してこの3社の幹部と面談し、合意に向けた最終的な後押しをした。しかも当時の出張費用は、3カ国を回る1週間の旅で1万9000ドル(207万円)だった。それで数億ドルの投資と数多くの雇用が生まれるのだから、かなりのコストパフォーマンスだと言える。
ちなみにテネシー州は前知事の時代から日本企業にアピールを続けており、今では183の日本企業が存在し、同州には177億ドル(1兆9285億円)の投資が行なわれて、5万人の雇用を地元で生んでいる。2013年には、海外投資による雇用創出が全米で1位になったという。
こうした成果を出すのは、知事として当然のことではないだろうか。州を良くするから投票してほしいと頭をさげて選ばれたのだから、結果を出さないと有権者は納得しない。
関連記事
- 世界が販売禁止に乗り出す、“つぶつぶ入り洗顔料”の何が危険なのか
スクラブ製品が、世界的に注目されているのをご存じだろうか。私たちが何気なく使っているスクラブ洗顔料や歯磨き粉などの一部には、いわゆる「マイクロビーズ」と呼ばれるプラスチックの粒子が使われている。その粒子が……。 - 中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」
中国共産党がネット上の検閲に力を入れている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる工作員が反政府的な発言などをチェックしているが、2015年に最も削除された発言は……。 - なぜ「楽天」が世界中で叩かれているのか?
英語の社内公用語化など、グローバル企業への成長を目指して動き出した楽天。だが、本当に必要なのは「国際企業ごっこ」ではない。国際社会に対する社会的な貢献が求められる。 - 「最恐の殺人地域」を救うことができるのか 武器は日本の意外な“文化”
「中南米は危険」といった話を聞いたことがあると思うが、私たちが想像している以上に“危険”であるようだ。「世界で最も暴力的な都市2015年」を見ると、上位に中南米の都市がランクイン。こうした状況に対して、日本のある文化が期待されている。それは……。 - フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。 - 世界から「児童ポルノ帝国」と呼ばれるニッポン
衆議院で可決した「児童買春・ポルノ禁止法」改正案。日本では大きく報じられていないように見えるが、海外では大きな話題になっている。規制が強化された格好だが、海外メディアの反応は厳しい。その内容とは……?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.