連載
大阪に“粉もん文化”を作った千利休:「真田丸」を100倍楽しむ小話(2/2 ページ)
戦国武将に茶の湯を広めた立役者、千利休。実は大阪に根付いている「粉もん文化」を作ったとも言われています。
小日向: 利休については、茶道具の価値を高めたブランディング力にも注目したいです。例えば、茶碗や茶器などは言うまでもなく土からできていますよね。当時、日本に来た外国人が「日本人は土に価値を感じるのか」と驚いたそうです。
ダイヤモンドなどの宝石だと、資源量は有限で、希少価値があるわけですが、土自体はそんなことはありません。それをこねて、形作り、焼いて、色を塗ってと、どんどん土に付加価値を与えていくことで、最終的には武将たちが喉から手が出るほど欲しい茶道具に変わるわけです。これはまさにブランディングですよね。
編集部F: 武将たちの茶道具に対する熱の入れようは凄まじかったようですね。
小日向: 例えば、以前この連載でも取り上げた滝川一益は、武田家討伐に際して、その恩賞に織田信長が所有する「珠光小茄子」という茶器を望みましたが、結果は上野一国を与えられました。一益はこれをたいそう悔しがりました。一国の主になるよりも茶器がほしかったのです。
また、日本で初めて爆死した人物と言われている松永久秀もそうです。久秀が所有する「古天明平蜘蛛」という茶釜があって、信長はこれが欲しくてたまらなかったのです。何度も所望したけれど、久秀は断り続けました。
ついには信長が裏切り者の久秀を攻め込み、信貴山城に立てこもる久秀に対して、名器・古天明平蜘蛛だけは城外に出すよう求めたのですが、信長の手に渡るのを嫌った久秀は茶釜もろとも爆死してしまいました。命よりもいかに茶道具が大切だったということを表すエピソードです。
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