「中古車で十分」の先に起こる日本の不幸化:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
「新車なんて買えない。中古車で十分だ」。これが今の日本の消費者のリアルな声だ。そこには日本経済の停滞が大いに関係するのは言うまでもない。
出口はあるのか?
こういう状況だから出口は簡単ではない。ほかの指標を見ても分かるのだ。これだけ税収が足りないと言いつつ、なぜ国の借金が増え続けていくのか納得がいかない人は多いだろう。それはこういうことだ。個人が消費を抑制し、企業がコストダウンをして内部留保を貯める。それは金融機関にどんどん貯め込まれる。貯め込まれたお金には当然金利が発生するので、銀行は何か運用しないわけにはいかない。
個人も企業もお金を使う気はないので、国に使ってもらうしかない。もし誰も使う人がいなければ預金金利を払えず銀行が潰れるのだ。それは銀行という企業の問題ではなく金融システムの崩壊だ。となれば国が国債を発行するしかない。そして国債を発行して財源を用意してしまった以上何かに予算を付ける。そうやって「国民の借金」が増えていく。
生活者としての実感と正反対の話だが、今世界中で起きている現象は「金余り」だ。だから日本は国債残高がどんどん増えていくし、余ったお金の運用先を求めているから、常に世界のどこかでバブルが発生することになる。
という遠回りをして、ようやくクルマの話に戻る。「新車が売れないと言ったって、それは中古車が使い物になる間だけでしょ?」という人もいる。それはその通り。機械である以上寿命があるので、中古車はやがて淘汰される。その間新車が売れなければ、未来の中古車の供給は減り、中古の競争率が高くなる。新車と違って相場商品である中古車の受給が引き締まれば、中古車がどんどん値上がりすることになり、価格差がなくなって新車の売れ行きが戻るのだ。だから一時的なものに過ぎないという見方は正しい。
しかし、企業経営というのはそういう波に弱い。「要らない」と言われて新車生産を調整してきたところで、突然新車が売れるようになっても生産量には限界がある。ましてや「要らない」と言われている間に生産設備自体を処分してしまう場合だってある。
そうなればもう簡単には元に戻れない。財の生産装置としての自動車メーカーを健全に維持していくためにはコンスタントな需要があることが理想なのだ。働いている人だって「来年給料を倍払うから今年は無給で働いてくれ」と言われたら干上がってしまう。企業も同じだ。
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