「7カンパニー制」導入でトヨタ商用車ビジョンはどうなる?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
2016年5月、トヨタは大規模な組織改革を実行し、7つのカンパニーに分けた。その中の1つ、CV(商用車)カンパニーのキーマンに戦略の展望などを直撃インタビューした。
変わりゆく新興国マーケットでの課題
トヨタには世界に名だたる数々の商用車がある。ハイエース、ランドクルーザー、ハイラックスなど、特に新興国で人や物の輸送に加え、軍や警察車両など治安維持の用途にまで至るインフラの重要な担い手である。国内に目を移せば、ハイエース、プロボックス/サクシードがある。営業車の揺らがぬ定番として、日夜日本の経済活動を草の根レベルで支えているのだ。どのクルマも偉大なクルマだと思う。リスペクトさえ感じるクルマたちである。
トヨタの商用車が世界で覇権を唱えてくることができた要因の1つは、中嶋氏によれば、きめ細かなローカライズ対応によるものだそうで、国によってルールや基準が異なる中で、その対応力は大きな戦力になってきた。
しかしながら、例えばインドやASEANは間もなく欧州基準のEURO6に準拠することが決まっており、そうなればトヨタのこれまでのアドバンテージの原動力が消えてしまう。欧州メーカーは欧州仕様のまま輸出することが可能になるのである。そうした中でこれまで以上に「世のため、人のために、もっといいCVづくり」を目指して戦っていくのだそうだ。
重要なポイントは、インフラとのパッケージ化だ。例えば、鉄道の輸出のような場合、車両と設備だけでなく、それを運行するためのシステムが必要だ。トヨタは、それをクルマと一緒に輸出していくことを視野に入れている。ハイエースは、新興国では荷物を運ぶものではなく、人を運ぶバスとして使われている割合が圧倒的に高い。実質的には公共交通手段なのだが、運用は泥縄だ。適当に乗りたい人が乗ったら走り出す。それでは効率的な運用は不可能だ。だから定時運行や停留所などの公共交通ノウハウをクルマとセットで輸出していく必要がある。そこまでやって「世のため、人のために、もっといいCVづくり」になるのだ。製品だけでなく総合力で戦うことで新たなアドバンテージを生み出していくという考え方だ。
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