「7カンパニー制」導入でトヨタ商用車ビジョンはどうなる?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
2016年5月、トヨタは大規模な組織改革を実行し、7つのカンパニーに分けた。その中の1つ、CV(商用車)カンパニーのキーマンに戦略の展望などを直撃インタビューした。
トヨタの商用車戦略
さて、中嶋氏はCVカンパニーのバイス・プレジデント、つまり副社長だが、肩書きは常務役員となっている。熱くエネルギッシュな人だ。CVカンパニーはCommercial Vehicleという名の通り商用車部門である。
中嶋氏が配布した資料によれば、線で囲ったCVカンパニーの内側にはトヨタとトヨタ車体があり、その外側に連携する事業体として、トヨタの海外事業体と日野、ダイハツが描かれている。
トヨタとトヨタ車体はその絵柄の中心にイコールパートナーとして収まっているのだが、実は実務の中核となるのはトヨタ車体である。言い換えれば、7カンパニー制のうちCVカンパニーの中核はトヨタ車体ということになる。
カンパニー制の将来形として、トヨタ車体をトヨタの一組織として取り込むのかと聞けば、それぞれ別の企業体でいいのだと中嶋氏は言う。企業という形として一体になることが目的ではなく、会社の垣根を取り払って商品企画から始まるクルマ作りが一体であることが目的だと言うのだ。つまり、新しい事業部制度の中で、CVカンパニーは大げさに言えばファブレス事業的側面を持っていることになる。外向けの明快な発表と内向けの現実的対応。そういう食えない感じがとことん現実主義である。
カンパニー制以降のビジョンについては大きく3つに区分けされている。第一が「タイムリーな商品企画」である。つまり、商用車全体のバランスを見つつ、計画的にモデルチェンジを行うことで、モデルライフの長いCVを計画的に活性化させていこうということだ。当然開発リソースの安定的稼働という意味もあるだろう。
第2に「ラインアップの拡充」だ。これは軸となる本筋の商用車からさまざまな発展モデルを作り出して戦略的な商品ラインアップを構築しようということだ。具体的には商用車をベースとしたSUVやミニバンの開発を意味している。
第3は「新技術のけん引」。商用車は稼働率が高く走行距離が長い。環境技術や安全技術が地球全体に及ぼす影響は乗用車より大きい。例えば、自動運転導入のインセンティブも商用車の方が大きいのは考えればすぐ分かる。ドライバーの数が減らせればそれはすぐに物流コストに跳ね返る。自動運転がそれなりに高価であったとしても、人件費に比べれば安い。つまりトヨタ全体にとって新技術の普及をけん引していく役割を担う可能性が高いのだ。
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