トヨタVS. Google 自動運転の主導権を握るのは?(3/3 ページ)
トヨタ自動車の敵は、もはや自動車メーカーではなくIT企業などの異業種である。そして、その最大の敵はやはりGoogleだろう。本稿ではGoogleとトヨタに焦点を当て、自動運転における両社の動きを解説する。
どちらが主導権を握るのか
今年5月、Googleは欧州の自動車メーカー、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と提携を結んだ。グーグルが自動運転車の開発で自動車メーカーと提携するのは初めてである。グーグルは以前から、自動運転車を自社生産するつもりはないと公言しており、頭脳がグーグル、車体がFCAという分業で量産に発展する可能性がある。
また、GoogleがFCAと組んだのは、同社にとってノウハウの乏しい「クルマ作りの技術」が自動運転車の開発を進める上で大事だと認識したからだろう。一方のトヨタも米大学とのパイプを築くことで、やはり経験の浅い「IT技術」を身に付けようとしている。
お互いがこの時期に、ストレートに“相手側”の業界と手を結んだのは、自動運転社会が間近に迫っているという危機感の現れかもしれない。
前回の記事で書いたように、自動運転のハードウェアは完成形に近い。だからこそ、今後はどこを走れるかが重要になってくる。
Googleは公道で自動運転の実験走行を認可してもらうべく、まずネバダ州と交渉。その結果、同州は2012年に、米国で初めて自動運転走行を可能にする法律を施行した。Googleは他の州でも交渉を重ね、現在はフロリダ州やカリフォルニア州でも自動運転走行が可能になっている。
こうしてGoogleは、国や州政府の後押しも受けて、自動運転の主導権も握ろうとしている。日本も首相が「2020年までに自動運転を実用化する」と宣言したのだから、世界で最初に一般人が自動運転で移動できる国を目指してほしい。
自動車産業は日本経済を支えていると言っても過言ではない。その意味で、この異業種決戦は国の戦いでもあるのだ。
筆者プロフィール:森口 将之
1962年東京生まれ。モータージャーナリスト、モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本デザイン機構理事。日本自動車ジャーナリスト協会、日仏メディア交流協会、日本福祉のまちづくり学会、各会員。著書に「パリ流 環境社会への挑戦」「富山から拡がる交通革命」「これでいいのか東京の交通」などがある。
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