年間25億ドル以上の資金流入 過熱する宇宙投資はまだ続くのか?:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
先月に米国・シアトルで開催された宇宙ビジネスカンファレンスに、スピーカーとして訪れた。そこで改めて実感したのが、宇宙ビジネス分野に対する投資の急速な伸びである。イベントレポートとともにお伝えしたい。
200人のエンジェル投資家をネットワーク化
こうした世界的なベンチャー投資を支えているのが、各国のベンチャーキャピタルやアクセレレータである。
その中でも有名なのが、今回のNEWSPACE 2016でもスピーカーとして参加した米Space Angels Networkだ。同社はエンジェル投資家の世界的なネットワークを有しており、有望な起業家と投資家を繋ぐ役割を果たす。その投資領域は宇宙のみに特化している。
メンバーの数は既に200人を超えており、米国だけでなく、世界各国に広がっている。これまで投資を受けた宇宙ベンチャー企業の数は20を超えており、小型衛星の米Planet Labs、小惑星資源探査の米Planetary Resources、月面輸送プラットフォームを目指す米Astrobotic Technology、小型衛星専用ロケットを開発する米Firefly space systemsなど有力ベンチャー企業が顧客リストに名を連ねている。
同社は初期段階での投資が特徴であり、投資額は10万ドル前後のケースもあるが、今年発表されたPlanetary ResourcesのシリーズA投資ラウンドは約2000万ドルに及んだ。昨今の投資領域として同社のチェアマンを務めるジョー・ランドン氏は「Terrestrial(地上)、In-Space(宇宙空間)、Planetary(惑星)の3つがあり、Terrestrialが最も成熟している。In-Spaceは成長期で参入が多い」と語っていた。
同社では非常にクオリティを重視している。エンジェル投資家に名を連ねるには一定の基準を満たす必要があり、毎年数百人の応募があるものの、現在まで200人のみとなっている。また評価プロセスを経て投資を受けられる企業も、ランドン氏は「5%程度にすぎない」と語るなど、狭き門である。
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