年間25億ドル以上の資金流入 過熱する宇宙投資はまだ続くのか?:宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)
先月に米国・シアトルで開催された宇宙ビジネスカンファレンスに、スピーカーとして訪れた。そこで改めて実感したのが、宇宙ビジネス分野に対する投資の急速な伸びである。イベントレポートとともにお伝えしたい。
米国を代表する宇宙ビジネスカンファレンス「NEWSPACE 2016」が6月21日〜23日の日程で開催された。これまで開催地はシリコンバレーだったが、今年はシアトルに場所を移した(関連記事)。
筆者は昨年初めてこのイベントに参加したが、今回は「Global Space」というパネルディスカッションに登壇して、他国で新宇宙産業のアクセレレータとして活躍する方々と議論した。今回はそこで見聞きした宇宙投資の現状をお伝えしたい。
宇宙ベンチャー投資が2015年は15億ドル
近年、宇宙ベンチャーへの投資が急ピッチで加速している。今年4月に米調査会社のTauri Groupが発表した調査レポート「START-UP SPACE」によると、2015年の宇宙ベンチャーへの資金流入は年間で約25億ドルを超えた。内訳としてベンチャーキャピタルなどからの投資が約15億ドル近くに上っており、これは過去10年間のベンチャーキャピタルなどによる投資額の合計を超える金額だ。
投資額だけではない、宇宙ベンチャーに投資するベンチャーキャピタルの数も2000年代前半は年平均5社以下であったが、2000年代後半では10社近くなり、2015年には50社以上が投資を行った。近年の米SpaceXの成功はもちろんだが、2013年の化学メーカー大手・米Monsantoによる気象データベンチャー・米Climateの買収(約1000億円)、2014年の米Googleによる衛星画像解析ベンチャー米Skybox Imaging(現Terra Bella)の買収(約500億円)などが投資家にエグジットの可能性を見せた影響もあるかもしれない。
日本でも、小型衛星ベンチャーのアクセルスペースが2015年にシリーズA投資ラウンドで約18億円を調達。また、スペースデブリ(宇宙のゴミ)除去を目指すアストロスケールが2016年にシリーズB投資ラウンドで産業革新機構などから約30億円を調達するなど、盛り上がりを見せている。
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