星野リゾートの青森エリアが挑む「冬」との戦い(4/5 ページ)
いよいよ東京のど真ん中に「星のや」をオープンする星野リゾート。これまでさまざまなホテルや旅館を再生してきた同社は、現在国内外で35施設を運営する。今回はそのうち3施設を展開する青森県での取り組みを追った。
アクティビティの参加率を高める
唯一、冬期に営業できない奥入瀬渓流ホテルは、まさに春すぎから秋までが勝負である。古くから紅葉のシーズンは安定的に観光客が訪れるが、それ以外の季節でどう集客するかが課題としてあった。そうした中で、今注力している企画テーマが「苔」である。
数年前から「苔ガール」と呼ばれる苔好きの20〜40代女性が増えていて、その流れに奥入瀬渓流ホテルも“相乗り”。十和田・奥入瀬エリアはさまざまな苔の生息地として知られていることから、奥入瀬渓流ホテルは2013年から女性限定の滞在プラン「苔ガールステイ」を提供。当初は期間限定だったが、現在はその制約を取り払うほどの人気となった。2016年6月には部屋全体がモスグリーンに覆われた「苔ルーム」という個性的な客室を設けたほどだ。
奥入瀬エリアは古くから青森の中では有名な観光地であり、多くの団体旅行客が訪れていた。近年になって団体から個人へと旅行客の傾向が変わっていったが、大半は40〜60代の夫婦だった。どうしたら若い顧客層を獲得できるか、そう考えた末に出てきたアイデアの1つが苔だった。
さらに2年ほど前から朝のツアーを開始。奥入瀬に詳しいホテルスタッフによる「奥入瀬ガイドウォーク」や「苔さんぽ」など、奥入瀬の大自然を体験するプログラムを企画する。目的はライトユーザーの取り込みだ。それ以前からもガイドツアーは行っていたものの、「内容が専門的で、しかも料金は高額でした。あまり利用者はいなかったのが実情です」と宮越氏は明かす。
間口を広げるために、フリープログラムという無料ツアーも用意。夜には「森の学校」という奥入瀬の自然を学ぶ授業も設けた。こうした取り組みによって徐々に参加者は増えているそうだ。以前はアクティビティの参加者が宿泊者の1割に満たなかったが、現在は3割近くまで増えているという。
冬期については、近い将来の通期運営を達成したいとする。宮越氏は「冬にも八甲田山の樹氷や奥入瀬の氷瀑など観光資源は豊富ですし、温泉を強化すればもっと魅力的になると思います。現状は交通事情などの問題はありますが、行政任せにするのではなく、我々から働きかけて解消を目指したいです」と意気込んだ。
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