無名な店ばかりなのに、客が集まる商業施設が浅草にあった:繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(2/4 ページ)
消費者の目が厳しくなった今、単に安くて良いものが買えるというだけでは繁盛店にはなりません。そうした中、昨年12月に開業したばかりの東京・浅草の商業施設は、なぜ連日のように大勢の人たちで賑わっているのでしょうか。その理由を探ります。
フロア構成は、1階食品、2階日用品、3階情報発信、実演・体験、4階飲食で、合計売場面積は約3732平方メートル。約1000坪です。
年間集客想定は372万人以上を見込んでおり、年間売り上げ目標は30億円としています。それほど大きな売場面積ではないのですが、とにかく連日お客さんが集まっています。最近私が見た施設の中ではダントツの集客力。平日の店内の混み具合は、今年3月にできた新宿駅新南口のルミネ「NEWoMan」や、「東急プラザ銀座」にも負けないほどです。開業100日目で来館者数180万人を突破したということですから、当初目標の2倍近い集客ペースであることが分かります。特に高年齢層を最も集めている店と言ってもいいでしょう。
確かに立地が良いというメリットはあります。まるごとにっぽん周辺の2014年6月の歩行者交通量は、平日で1日当たり2万5000人(接道する3道路の合計値)、休日で5万人。浅草エリア全体では毎年約2800万人の観光客で賑わいます。訪日外国人の多くも浅草に立ち寄ります。
しかし、それだけで人が常に集まるということはありません。なぜまるごとにっぽんはたくさんの人を引き付けているのでしょうか。そのポイントは品揃えに対するこだわりにありました。
まるごとにっぽんにはさまざまな全国の逸品を集めている、まさに日本の地域産品のセレクトショップです。全国各地の地産グルメを扱う食物販店舗、地方に伝わる伝統を生かし新しいモノづくりに取り組む物販店舗、全国の市町村が集まる「おすすめふるさと」とコラボレーションするサービス店舗、浅草の景色を楽しみながら旬の味覚が楽しめる飲食店など、全4フロアに、飲食店8店、物販37店、そのほか5店の合計50店を集積しています。
店舗数はそれほど多くないのですが、アイテム数は数万に上るでしょう。コンビニは一般的には3000アイテムほどを品ぞろえしていますから、それよりもはるかに多く、その1つ1つがニッポンを感じさせるものばかりで、非常におもしろい。また、店内は心が落ち着く空間になっています。
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