伝説のマイケル・ジョーダンは、なぜ長年の「沈黙」を破ったのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
米国で人種をめぐる事件が続いている。黒人と警察官の間には「一触即発」と言っていいほどの緊張感が漂っているが、そうした状況の中でマイケル・ジョーダンが立ち上がった。ジョーダンはこれまで社会的な発言を控えてきたのに、なぜ声を発するようになったのか。
簡単に動画が撮影できるようになって
ジョーダンは「自分の父親を殺害された遺族」と書いているが、実はジョーダン自身も銃による犯罪で父親を失っている。1993年、ジョーダンの父親は、若い黒人強盗2人によって銃殺されている。葬儀に参列した帰りに、ハイウェイで仮眠しているところを襲われたのだった。
ジョーダンの声明は続く。「愛する肉親を失った家族を追悼する。その痛みは嫌というほど分かっている。私は両親から、人種や出自に関係なく、人を愛して尊敬するよう教えられて育った。最近、対立的な表現や人種間の緊張が悪化しているようで、悲しいし、失望している。この国はそんな国ではない。私はもう黙っていることができない。有色人種がフェアで平等な扱いを受けられることを人々に保障し、私たちすべてを守るために毎日命を懸けて働く警官が尊敬されて支持されるように、解決策を見つける必要がある」
特にここ2年ほどは、携帯やスマホの動画撮影が簡単にできるようになったことで、黒人が警官に殺される事件が映像で明らかになり、SNSなどで拡散され、それが人種間の関係性を緊張させている。例えば、2014年7月にはニューヨーク州で43歳の黒人男性が白人警官に拘束されて窒息死した動画が報じられ、各地でデモが発生した。また同年8月にはミズーリ州ファーガソンで18歳の黒人が白人警官に射殺されてその後1週間近く暴動が起きた。2015年にはメリーランド州ボルチモアで護送中に黒人男性が死亡し、6人の警官が処分され、暴動に発展している。
米国で警察による暴力をチェックしているプロジェクト「マッピング・ポリス・バイオレンス」によれば、2016年はこれまでに、160人の黒人が警官に殺害されていると指摘している。もちろん警官による正当な対処も含まれているが、その一方で、160人のうち3分の1のケースで殺害された黒人は武器を所持しておらず、暴力的な事件ではなかったことが判明している。
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