ドローンやAIを駆使して40億人を救う Facebookが進めるネットインフラ構築とは?:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
宇宙ビジネスへの新規参入がますます加速している。SNS最大手の米Facebookがソーラーパワーで飛ぶドローン「Aquila」のテスト飛行に成功。地球の隅々までインターネットインフラを普及させるプロジェクトを推進する。
ドローンを活用したネットインフラ構築
同時期にFacebookはドローンメーカーとして著名な米Titan Aerospaceの買収を試みている。同社は「大気圏衛星」と呼ばれる高度約2万メートルを、着陸や燃料補給することなく5年間飛行可能なドローンを開発中だ。しかしながら、最終的には同じく新興国におけるインターネットインフラ普及の取り組みを進めているインターネット大手の米Googleが同社を買収することになった。
2015年7月、FacebookはConnectivity Labの取り組みとして、「Aquila」と名付けた、高度1万8000メートルを3〜6カ月間飛行可能なドローンとレーザー技術を活用したインターネット接続計画を発表。Facebook自身はISP(インターネットサービスプロバイダー)になるのではなく、ドローンおよび通信技術を世界の通信キャリアに提供し、既存の携帯電話網でカバーできていない人々がインターネットに接続できるようにするという思いがある。
そして今年6月にはAquilaのフルサイズ版を活用してテスト飛行を実施。地上からエンジニアが遠隔操作して、当初想定していた3倍の時間に当たる約96分間の飛行に成功した。当面の開発目標は2週間の連続飛行を掲げているが、今後の課題として夜間に飛び続けるための電力確保、飛行中の電力消費量の抑制などが指摘されている。
衛星データからAIで人口分布を解析
さらにFacebookは将来のAquila運用に向けた準備も進めている。Aquila自身は遠隔操作も可能だが、飛行中は自動操縦を前提として開発されている。ドローン自体が効率的に飛行してレーザーを発するためには、インターネット接続環境にない地域における詳細な人口分布データが重要だ。
しかしながら、新興国では詳細な人口統計データが存在しないケースも多く、同社は衛星画像データから建物の数などをカウントするなどして5メートル分解能の人口分布図を作製した。対象地域はアフリカ14カ国に、インド、スリランカ、メキシコ、トルコなどを加えた計20カ国、合計2160万平方キロメートル分に及んだ。
ザッカバーグCEOによると、人口分布図作成のために合計で156億枚の衛星データをAIに解析させたという。なお、この人口分布図は他コミュニティーも活用することができ、インターネットインフラだけではなくて、エネルギーインフラ、輸送インフラなど多岐に渡る可能性がある。
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